研究課題/領域番号 |
19K01352
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高橋 則夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (50171509)
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研究分担者 |
増田 隆 帝京大学, 法学部, 講師 (10527344)
松澤 伸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (20350415)
松本 圭史 愛媛大学, 法文学部, 講師 (20801103)
吉中 信人 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 教授 (60284147)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 刑法 / 正犯と共犯 / 統一的正犯 / ドイツ刑法 / オーストリア刑法 / イタリア刑法 / 国際刑法 / 北欧刑法 |
研究実績の概要 |
本研究は、犯罪への関与形式を「正犯」と「共犯」に区別する「共犯体系」の規定を前提としながらも、実質的には、犯罪に関与した者を原則的に「正犯」として処罰する「統一的正犯体系」を採用している日本の刑事裁判実務に対して、外国法との比較を踏まえた理論的基礎づけを行うことで、理論と実務の架橋を試みるものである。 本年度(2020年度)は、各研究者が、文献講読およびオンラインでのインタビュー調査を通じて、ドイツ刑法、オーストリア刑法、北欧(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)刑法、イタリア刑法、国際刑法における犯罪関与者の処罰をめぐる議論および実務状況全般について引き続き調査を行うとともに、前年度(2019年度)に確立した調査方針に基づいて、共犯体系と統一的正犯体系の間で理論上問題となりうる共犯と身分、共犯の従属性、共犯の因果性等の問題について具体的に検討を行った。また、オンラインで研究会を開催し、各自の調査・検討をもとに、イタリア刑法における共同正犯論、ドイツ刑法およびオーストリア刑法における共犯と身分・共犯の従属性、国際刑法におけるローマ規定と判例、北欧刑法における共犯規定の特色について議論を行った(イタリア刑法における共同正犯論およびドイツ刑法における共犯の従属性については、その成果の一部を公表した)。 また、殺人罪と保護責任者遺棄致死罪をめぐって間接正犯と共同正犯の成否が問題となった最決令和2年8月24日刑集74巻5号517頁についても、本研究と関連するものとして検討を行った(研究成果の一部として、本決定に関する判例評釈を公表した)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(2020年度)は、当初の研究計画によれば、各研究者が、調査対象とする法域に関する現地調査(文献調査およびインタビュー調査)を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響で実施することができなかった。もっとも、前年度(2019年度)末の時点で、研究期間中の現地調査が実施困難であることを見越して、オンラインでのインタビュー調査に切り替え、研究会もオンラインで実施することできたため、当初の予定とは異なるものの、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2021年度)は、研究計画に従い、各研究者の調査と研究会での議論を繰り返し、過年度(2019~2020年度)の研究成果をさらに深化させながら、研究の取りまとめとして、各法領域の調査で得られた知見を日本法の議論へ応用し、日本の刑事裁判実務における統一的正犯体系に基づく解釈の採用可能性について検討を行い、研究成果の公表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、本年度(2020年度)に予定されていた海外での現地調査を研究期間中に実施することが困難であると予想されたため、調査の大部分をオンラインで代替する措置をとったが、最終年度(2021年度)に現地調査が実施できる可能性もあったことから、海外旅費を最終年度に持ち越したことにより、次年度使用額が生じた。 最終年度においても現地調査は困難であることが見込まれるため、なおも現地調査の実施を検討しながらも、文献の購入費やデータベースの契約費、国内旅費などに代替しながら研究計画を進めていく予定である。
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