研究課題/領域番号 |
19K01353
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
竹村 典良 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (60257425)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 宇宙グリーン犯罪学 / 宇宙環境刑法・刑事手続 / 地球外宇宙採掘 / 宇宙植民・環境地球化 / 宇宙環境危害・汚染・破壊 / 宇宙環境保護 / 宇宙環境紛争 / 宇宙環境裁判所 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、第一に、南側途上国および北側先進国に現象する環境・エコ犯罪の形態・パターンを明らかにし、第二に、北側先進国グリーン犯罪学の理論的解釈レンズを矯正し、南側途上国で発生し、犯罪、暴力などの植民地主義に根差す諸問題を克服し、南北統合グローバル・グリーン犯罪学を生成・発展させ、第三に、天然資源等をめぐる多国間の紛争を解決する「国際環境裁判所」の創設のための諸条件を解明した。 とりわけ、本課題の発展的研究として、過去・現在・未来における宇宙開発に伴う宇宙環境危害・汚染・破壊に関して、宇宙グリーン犯罪学と宇宙環境刑法の基本構想、および、太陽系・銀河系・全宇宙における資源とエネルギーのコントロールについて検討した。 近年における宇宙探査・開拓の発展、宇宙資本主義に基づく積極的な開発に対して、「宇宙グリーン犯罪学」(astro-green criminology)「宇宙環境刑法」(astro criminal law)という新しい研究領域が必要である。人類は、環境を悪化し生態系を破壊した廃墟を地球上に生み出し、現在ではスペースデブリが地球周辺の宇宙を汚染し始めている。宇宙探査・開拓・開発が必要であるとするならば、地球外宇宙環境を汚染・破壊することなく、宇宙気候変動を惹起することなく、地球外生命体あるいはその進化過程を危機に晒し、阻害するような悪影響を生み出さないように、宇宙環境的かつ宇宙生態学的に安全な方法で行われなければならない。 また、地球外スーパーインテリジェンス(超知性)・高度知的文明に関する諸概念や諸調査研究、彼らの複雑システムの実体、エネルギーと資源のコントロール様式を分析・検討することにより、持続可能なエネルギーと資源をコントロールする方法について示唆を得ることができるならば、私たちはより賢明になり、今後数百万年にわたって生き続けることができるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の三本柱、第一に、南側途上国および北側先進国に現象する環境・エコ犯罪の形態・パターンを明らかにし、第二に、北側先進国グリーン犯罪学の理論的解釈レンズを矯正し、南側途上国で発生し、日常生活に影響する犯罪、暴力、正義の多様なパターンを説明し、植民地主義に根差す諸問題を克服し、南北統合グローバル・グリーン犯罪学を生成・発展させ、第三に、天然資源等をめぐる多国間の紛争を解決する「国際環境裁判所」の創設のための諸条件を解明する、を着実に進めている。 また、これらの計画を実施するための5つのプロジェクトを実行に移している。とりわけ、令和4年度は、「複雑かつグローバルな環境・エコ犯罪の現状を把握し、その総合的な対策を講じるために、宇宙グリーン犯罪学と宇宙環境刑法の基本構想、および、太陽系・銀河系・全宇宙における資源・エネルギーのコントロールについて検討した。 新しい概念「宇宙グリーン犯罪学」及び「宇宙環境刑法」を基盤として、スペースデブリの蓄積と低減、地球外宇宙採掘と環境破壊、宇宙資本主義・人新世と持続的開発、宇宙探査・開拓・開発の国家的・国際的規制、宇宙環境保護の哲学的基礎など、宇宙探査・開拓・開発に伴う宇宙環境汚染・破壊に関する諸問題について調査研究を実施した。 また、持続可能なエネルギーと資源をコントロールする方法についての示唆を得るために、地球外生命体・スーパーインテリジェンス(超知性)・高度知的文明に関する諸概念及び諸研究(地球外知的生命探査、フェルミパラドックス、ドレイク方程式、地球外スーパーインテリジェンス(超知性)・高度知的文明によるエネルギーと資源のコントロール、ダイソン球、 カルダシェフスケール)について調査研究を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、第一に、南側途上国および北側先進国に現象する環境・エコ犯罪の形態・パターンを明らかにし、第二に、北側先進国グリーン犯罪学の理論的解釈レンズを矯正し、南側途上国で発生し、日常に影響する犯罪、暴力、正義の多様なパターンを説明し、植民地主義に根差す諸問題を克服し、南北統合グローバル・グリーン犯罪学を生成・発展させ、第三に、天然資源等をめぐる多国間の紛争を解決する「国際環境裁判所」の創設のための諸条件を解明する。 これらの計画を実施するために、環境正義の考え方の多様性、グローバルな環境問題をめぐる紛争、越境環境危害・犯罪、国際環境裁判所について調査研究を実施する。 環境問題に関する紛争に国際司法裁判所が関わる件数が増加している。経済的利益のための自然環境の開発と健康・文化・社会などの持続可能な保護の間の緊張の高まりに対する認識が増加している。近代における個々の国家活動は、越境的でグローバルな環境危害・犯罪を惹起し、気候変動のさらなる悪化に貢献しているが、国際的な環境問題に対処することができる専門的な国際裁判所が存在しない。現在、環境統治と紛争解決のための解決方法の一つとなる専門的で注意深くデザインされた国際環境裁判所を新たに導入することが必要である。そのために、政治経済学の視点から環境正義について考察し、グローバルノースとグローバルサウスの不平等格差を明確にし、社会正義の視点から環境正義について議論し、世界中に生じている環境問題をめぐる紛争および越境環境危害・犯罪について調査分析し、これらに対処するための国際環境裁判所の導入の長所と短所を明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は、「南太平洋島嶼における海洋汚染、生物多様性の減退、天然資源採掘と環境破壊、とりわけ、ニュー・カレドニアにおけるニッケル採掘に伴う環境破壊の現状と問題ほか」に関する現地調査を令和4年8月に予定していたが、引き続く新型コロナウィルスの世界的蔓延のため、わが国のみならず調査対象各国における出入国制限が厳しく、状況が改善するまで現地調査を延期することにした。そのために、次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画は、令和5年度の現地調査費用あるいは調査研究文献の購入、資料収集に使用する予定である。
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