研究課題/領域番号 |
19K01359
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山田 直子 関西学院大学, 法学部, 教授 (70388726)
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研究分担者 |
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
大橋 靖史 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (70233244)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 取調べ可視化 / 取調べ技法 / 事実認定 / 量的分析 / ディスコース分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は以下の(1)から(4)である。すなわち、「取調べ技法及び取調べ内容提示媒体の差異」が、「取調べで得られた供述」に関して、(1)事実認定者がおこなう証拠能力の評価に影響を及ぼすか否か、(2)証拠能力の評価に影響を及ぼす場合にはその内容と程度、また、(3)事実認定者の心証形成に影響を及ぼすか否か、(4)心証形成に影響を及ぼす場合にはその内容と程度、そして影響の発生要因は何か、を特定し、人権保障及び事案真相解明に資する適切な取調べ技法及び公判における取調べ内容の適切な提示方法について提言すること。 2019年度は、文献調査を実施した後、研究計画に従って、心理学的知見を全面的に導入して現在世界標準となっている取調べ技法(PEACEモデル)を開発した英国において、警察官に対する取調べ技法教育及び取調べ技法の更なる洗練化の中心的役割を果たしているマンチェスター警察署において、指導者の地位にある警察官から最先端の取調べ技法の実際と課題を学んだ(研究代表者山田直子及び研究分担者指宿信)。 また、上記文献調査とマンチェスター警察で得た知見に心理学的・演劇的知見を加味し、取調べ内容提示媒体(実験刺激)及び質問紙を作成して、インタビューを伴う予備実験を行った(研究分担者大橋靖史及び研究協力者北村亮太)。なお、予備実験で得られた質問紙及びインタビューのデータは、すでに逐語反訳化され、本実験のデザイニングを洗練化するためのディスコース分析が開始されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、複数の取調べ技法・複数の取調べ内容提示媒体を用いた法と心理学的実験と被験者へのインタビューをもとに得られたデータを量的・質的に心理学的に分析し、さらに法学的検討を加えることで、最終的には刑事訴訟法の目的に資するような適切な取調べ技法及び公判における取調べ内容の適切な提示方法につき提言するものである。 上記研究遂行に当たり、本研究は初年度に、以下の事項につき実施を予定していた。 (1)各種関連文献調査、(2)取調べ技法の世界的指導者たる警察機関への訪問調査と資料収集、(3)心理学的・演劇的知見に基づいた質問紙及び実験刺激の作成、(4)前記(3)を使用した予備実験の実施、(5)予備実験で得られたデータ分析、(6)前記(5)をもとにした本実験の洗練化に向けた検討。 現在まで、本研究チームは、上記(1)から(6)に挙げた初年度の課題を、すべて順調かつ確実にこなしてきた。 従って、現在までの進捗状況は「区分(2)『おおむね順調に進展している』」に該当すると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策には全く変更はない。 2020年度は、予備実験をもとに洗練化されたデザイニングに従ってアンケート調査及びインタビューを伴う本実験を実施する予定であったが、コロナ禍に伴い、170名を超える被験者を集めての本実験実施が公衆衛生上困難となることが予想される。そこで本年度は、今後の動向を伺いつつ、本実験実施が可能となるまでの期間を、予備実験で得られたデータの詳細な分析を行って当該分析結果を論文化し又はオンラインで開催される各種学会で報告するための準備期間に当てると共に、本実験のデザイニングの洗練化と法学及び心理学的知見に基づく検討を重ね、本実験が実施可能となった暁には「研究実施計画」に則って本研究を遂行して最終年度に備える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していた対面式ミーティングがオンラインミーティングとなったため、交通費その他につき使用差額が生じた。 当該使用差額に関しては、コロナ禍が収束したのちおこなう本実験で得られるインタビュー音声データのテープ起こし代などに利用する予定である。
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