遺言能力に対して認知症が及ぼす影響について研究した。その過程で、そももそ我が国の民法は認知症の影響を考慮せずに制定されたことが判明した。そこで、次にイギリス法を研究した。その結果、イギリスでも我が国と同様に、認知症と遺言能力の関係が争われていること、そこでは遺言者の記憶が論点となっていること、イギリスの裁判所は遺言者の記憶に疑わしい点があるとしても遺言能力を肯定する傾向にあることが判明した。 また、イギリス法研究の過程で、「認知症と記憶」につき医学研究の進展が見られることも判明した。遺言能力と認知症の問題に、これらの知見を援用できる可能性を提示したことも、本研究の成果の一つである。
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