本研究は、民法(民法学を含む)の変化を指標として平成期日本(1989-2018)の社会変動を総括する試みである。 前年度までに特殊講義等の成果をふまえつつ平成期日本の社会と法の変化に関する考察をまとめる作業を終え、これを新著にまとめる作業を進めて一通りの完成に至った。その際に、平成期の日本(1989-2019)に関する全般的な文献、政治、外交、社会、経済、文化に関する一般的な文献の追加的な収集を継続し、これらを分析することを通じて得られた知見を適宜付加した。2022年度中に刊行予定であった新著は出版社の事情により遅延しているが、2023年度中には刊行されるはずである。 最終年度は、これまでの成果をふまえて、二つの方向での展開を図るための研究に着手した。一つは、家族と家族法の変化に関するより立ち入った研究であり、次期の科研テーマの模索を兼ねて、検討のためのフレームづくりを試み、その一端を韓国で開催された講演会において発表した。 もう一つは、社会変化への市民の関与・対応に関する研究であり、私の別の研究テーマである民法を通じての制度づくりや法教育の延長線上に位置づけられるものである。具体的には、一方で、契約法による場合と不法行為法による場合とで、市民の関与の仕方(レベルと広がり)が異なることを判例を素材として示すとともに、他方、紛争解決(事前)と制度設計(事後)とを日常生活レベル・地域レベルで行うための思考方法・技能を組織化して示すことを試みた。これらのうち前者については小著を刊行した。
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