研究課題
本研究は訴訟類型の違いに着目して訴訟費用の問題を検討するもので,今年度は人事関係訴訟を中心に研究を行った。民事紛争でも公的利益も問題になる家族関係紛争等の人事関係訴訟においても,法改正に伴い訴訟費用の敗訴者負担の原則が採用されることになった。具体的な訴訟類型として,親子関係が争点となる紛争について,決定的な証拠として重要になるDNA鑑定のコストにを取り上げ考察した。判例の考察によると,訴訟手続の準備段階と訴訟手続きにおいて鑑定費用が必要になっている。この問題は,科学技術の汎用化による裁判への科学的知見の組み入れ,新たな科学鑑定コストの導入の側面があり,民事訴訟費用法等で定められてきた費用とは異なる新たに必要なコストが生じていることが分かる。これらの新しい費用は,紛争解決に必要な費用にも関わらず法的規制もなく高額化が懸念される。この点に関して,家族関係訴訟をDNA鑑定費用の推計を通じて,家族関係紛争解決コストの問題を法と経済的学的な見地から考察を行った。また,前年度に引き続き,裁判所書記官の権限となった訴訟費用額確定決定の基準,訴額算定の基準となる訴えでもって主張する利益の考え方について,民事訴訟法及び民事訴訟費用法を準用する行政事件についても,実務的な運用が,裁判を受ける権利の保障に影響を与える点について考察を行った。研究最終年度として,比較法的考察を取り入れつつ,提訴手数料の算定基準とされる訴えを持って主張する利益について,その合理性を法と経済学的考察をまとめ学会発表と論文作成を継続した。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)
令和3年度 重要判例解説
巻: ジュリスト4月臨時増刊 ページ: 107,108