研究課題/領域番号 |
19K01365
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
常岡 史子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50299145)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 民法 / 相続法 / 家事事件手続法 / 配偶者居住権 / 遺産管理 / 遺言執行 / アメリカ法 / ドイツ法 |
研究実績の概要 |
令和元年度及び令和2年度に引き続き、民法及び家事事件手続法における相続法制の検討を進めた。さらに今年度は、令和3年4月28日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律25号。〔相続土地国庫帰属法〕)の分析を行い、研究の広がりと厚みの増加を図った。令和3年のこの2件の法律は、所有者不明土地の発生の予防とそのような土地の利用の円滑化を目的とするが、諸規定の対象は広く遺産の管理や遺産分割の期間、物権法の共有と相隣関係、不動産登記法の見直し等に及んでいる。本研究では特に、①相続財産の保存(民法897条の2)と管理(民法918条、926条、940条、家事事件手続法146条の2、147条等)、②相続財産の清算(民法936条1項、952条から958条)、③遺産とともに物権法における通常の共有を含めた共有物の使用・変更・管理に関する諸改正規定について、その内容と効果を検討するとともに、④相続開始時から10年経過後の遺産分割に関する制限の新設(民法904条の3)と、⑤遺産分割の禁止に関する規定の整備(民法908条)についても、その意義と実効性について考察した。さらに、⑥相続登記の申請の義務化や相続人申告登記などの不動産登記法の諸改正、⑦新設された相続土地国庫帰属法の内容とその効果等、民法にとどまらない相続法制の最新の状況について研究を行った。 外国法については、①アメリカにおける電子遺言に関する法整備の状況に関し、統一電子遺言法をもとに考察した。また、②法定財産制及び離婚による婚姻解消時の財産分与制度と相続法上の配偶者の地位に関し、ドイツの法制度との比較研究を進めた。 次年度も、ここまでの成果をもとにさらに研究を遂行していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、昨年度に引き続き、平成30年に行われた民法及び家事事件手続法の一部改正(平成30年法律第72号)により設けられた相続法の新制度について検討を進めた。それに加えて、令和3年4月の民法改正及び相続土地国庫帰属法の成立を受け、相続法制の新たな展開についても研究に着手した。 外国法の分析においても、ドイツ法について利用しているデータベースをグレードアップしたこともあり、夫婦財産制と離婚給付及び配偶者相続権に関する検討を進展させることができた。また、アメリカの相続法制についても、統一電子遺言法(Uniform Electronic Wills Act)の分析をもとに、日本における電子遺言導入の可能性について考察する機会を得た。
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今後の研究の推進方策 |
日本の相続法制について新設された諸制度が順次施行を迎えており、今後は、実社会におけるそれらの制度の定着とさらなる課題の有無及びその解決について、裁判実務の動向も視野に入れながら検討を進める。 また、本研究で比較法的考察の対象としているアメリカ法及びドイツ法、EU法についても、各地域の研究機関の協力を得ながら資料の調査と収集を進めていく。データベースの利用についても、アメリカ法に関しては、所属大学で導入しているLexis及びHein Onlineの利用により研究を遂行している。ドイツ法については、本研究費を用いて令和3年1月からデータベースを継続的に購入しており、令和4年4月からはデータベースを追加して、EU法を含めた文献等の調査も可能とする予定である。 これらの方法を組み合わせて活用することで、引き続き本研究を滞りなく進めていくことができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来、アメリカとドイツにおいて、検認裁判所(probate court)及び遺産裁判所(Nachlassgericht)の実務に関する現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によって、調査の対象機関において引き続き受入れが困難となり、渡航を中止した。そのため、出張旅費の支出がなくなった。令和3年度に上記調査のため支出予定であった出張旅費等を次年度使用額とし、状況を見てアメリカ及びドイツでの調査と研究を実施する予定である。 なお、アメリカ法については所属大学のデータベースを使用し、またドイツ法及びEU法についてはデータベースを本研究費によって継続的に購入して利用しており、現時点において研究の進展に妨げはない。
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