研究課題/領域番号 |
19K01366
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
上山 泰 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50336103)
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研究分担者 |
内田 千秋 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40386529)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 取締役の欠格条項 / 成年後見制度 / 障害者権利条約 |
研究実績の概要 |
本年度は、厚生労働省からのオブザーバー参加を含む4名の研究会メンバーによる3回の研究会を東京で開催した。そこでは、主に①取締役等の欠格条項削除に関する法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会における審議内容の整理と、②改正後の関連論点の包括的な洗い出し、③フランス会社法における成年後見の利用と取締役等の地位との関係性に関する直近の法改正の動向を中心として、共同研究者2名からの研究報告を行い、これを踏まえた討議を行った。この研究会の成果の一部は、上山泰・内田千秋「会社法と成年後見法の交錯問題(1)―取締役の欠格条項削除に関する争点を中心に」法政理論52巻1号1頁、及び、同「会社法と成年後見法の交錯問題(2)―取締役の欠格条項削除に関する争点を中心に」法政理論52巻4号1頁において公表済みである。これらは当該領域におけるパイオニア的な業績であり、未公表の続編における改正法上の課題に関する解釈論の提起と併せて、学術的にも実務的にも大きな価値があると考える。なお、欠格条項削除に関する法改正全体を総括する論文として、上山泰「成年被後見人等に係る絶対的欠格条項の廃止」成年後見法研究17号3頁も公表した。 また、フランスのナント及びパリにおいて文献調査・収集を中心とする海外現地調査を実施した。併せて、この日程中にフランスナント大学において、9月9日、10日の日程で開催された「新潟大学・ナント大学日仏セミナー(「資産承継―相続・恵与の代替手段」)」に出席し、本課題と関連するテーマによる仏語報告(内田千秋「会社法上の手段(商事会社)」)及び英語報告(上山泰「日本における相続代替手段としての『家族信託』」)を行った。前者については、内田千秋「商事会社における会社法上の手段(事業承継を中心に)」市民と法120号64頁として、その一部を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度に想定していた研究会は、コロナウィルスによる緊急事態宣言等の影響でやむなく中止とした2月ないし3月に予定していた外部招聘講師による報告を除き、すべて順調に実施することができた。加えて、実施された研究会での報告と討議を基にした研究論文4編を公刊することができた。この研究成果の公表については当初の計画よりも早いスピードで進展できている。また、フランスでの文献収集を中心とした海外現地調査も予定通り実施することができた。加えて、この渡仏を活用して、ナント大学で開催された新潟大学法学部とナント大学法学部共催による国際シンポジウムにおいて、本課題と関連する外国語での報告を行うとともに、後日、その一部を邦訳したものを国内雑誌で公刊することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究会については、コロナウィルスの影響のため、外部招聘講師による報告会を含めて、すべてオンラインでの実施を中心に据える方向で現在調整を進めている。また、本年度は大学の夏季休暇期間中にドイツでの文献収集等を中心とした海外現地調査を実施する予定であったが、現状では欧州地域への渡航にはいまだ不安定な要素が残っているため、来年度への延期を視野に入れて、現在検討中である。 こうした社会情勢等も踏まえて、本年度は国内での文献調査とこれに基づく研究成果の公表に特に力点を置く予定である。本課題の中核を占める取締役等の欠格条項削除に関する会社法改正の今後の理論的課題については、既に2編の論文を公刊済みであるが、本年度はこれらの続編を公刊して、まずは論点の洗い出し作業を完結させる。加えて、研究協力者を含む法曹実務家を対象とした実務上の課題に関する聞き取り調査や、障害当事者やその支援団体等を対象とした彼ら・彼女らが会社役員等として活躍するために必要な支援のあり方等についての聞き取り調査等を、オンライン会議ツール等を活用することで、できる限り進めていく予定である。 なお、昨年度実施したナント大学とのシンポジウムを本年度は「日仏法における弱者の保護 ―法改正は必要か」というテーマで3月に開催する予定であり、共同研究者2名は本課題と直接的に関連するテーマで研究報告を行うことが予定されている。
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