研究課題/領域番号 |
19K01369
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 真紀 京都大学, 法学研究科, 教授 (60324597)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コーポレート・ガバナンス / 企業の社会的責任 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画に基づき、関連文献の調査を進めるとともに、企業の法務部、ダイバーシティ推進室その他、本研究課題に関連する部署にヒアリングをし、実態の把握に努めた。これらの調査から、少なくとも上場会社においては、近時のCSRの動きに対応した活動が積極的に進められており、経営者層の意識改革も進んでいることが確認された。ただし、従業員の利益保護については、上場会社など一定の属性の企業に共通する課題がある一方、業種や規模、各企業の組織や文化などにより、企業ごとに課題が異なる側面もあり、強制的な規律とソフトローなどによる柔軟な方向付けの両者の使い分けの必要性が認められた。一方、令和元年に会社法が改正され、企業の社会的責任にも関連の深い株主提案権制度も一部改正がなされたため、改正法の意義にかかる論稿を公表した。改正法は、1株主が提案できる数に制限を設けたが、従来みられた市民運動型の株主提案を実質的に制限する内容にはなっていないと考えられる。しかし、提案内容の制限にかかる改正が実現しなかったことと相まって、株主総会と経営者の権限分配につき、これまでの株主提案権の制度の課題がいっそう浮き彫りになる結果をもたらしたといえる。とりわけ、定款変更議案にかかる株主提案権の濫用は、引き続き、実務の課題になることが予想され、それに関連して株主総会の権限の限界が問題となることも確認された。議決権300個の要件の是非についても、再検討する必要が認識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前半は概ね順調に進んでいたが、年度末に予定していたヒアリング調査等が、新型コロナウィルスの影響で延期せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、引き続き、関連テーマの文献調査を進めるとともに、より多くの関係者へのヒアリングの機会を獲得すべく務め、進捗状況に応じて、関連テーマの論稿を公表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた調査旅行等が中止になり、また、ヒアリングの謝金等も、相手方が辞退された。国内旅費は、他の調査と兼ねることで、出費が控えられた。
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