研究課題/領域番号 |
19K01374
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高橋 英治 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (40275235)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | EU法 / 会社の持続可能性 / 権利のための闘争 |
研究実績の概要 |
EU会社法について、その体系的構造を明らかにする研究を行い、法学雑誌に発表した。この研究は、2022年で完結した。ドイツの有限会社法史の研究を発表した。日本とドイツの会社立法の違いを解明する論文を、発表した。この論文は、丸山秀平先生の古稀記念論文集において発表した。日本では、経済界が立案に参画し、経済権力に都合のよい立法が行われるにのに対し、ドイツでは、経済界は「外から」法案に対して意見を表明するという違いが解明された。この論文は、日本法において、将来子会社の少数派株主の保護のための立法を実現していくには、立法過程自身を見直さなければならないことを示唆している。 日本の一人会社に関する判例を取り上げ、私法判例リマークス64号に発表した。この判例評釈では、2014年4月9日にヨーロッパ委員会が公表した一人有眼会社指令案(SUP指令案)において定められていたように、一人株主には会社を指揮する権限があるとし(SUP指令案23条1項)、一人株主の指図があった場合には、一人会社の役員は、法令または定款に違反しない限りで、かかる一人株主の指図に従う義務を負うとすべきであると提案している(SUP指令案23条2項。高橋英治『ヨーロッパ会社法概説』〈2020年〉238頁参照)。また、本判例評釈は、一人会社を常態的に指揮する一人株主は事実上の取締役(または「影の取締役(shadow director)」)としての責任を負うとすべきである(SUP指令案22条7項参照。高橋・前掲『ヨーロッパ会社法概説』238頁参照)と提案している。 今後は、会社法における株主による「権利のための闘争」ということをテーマにした論文を発表する予定である。また、日本とドイツの株式会社法の発展史に関する単著が中国で発表される予定である。EUの会社法と会社の持続性をテーマにした論文も、これから発表しうる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果としてのEU法研究は、大きな成果を上げているが、コロナ渦で、海外からの本の調達が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
EU会社法において、近年、会社法は、気候変動や人権などに配慮すべきであるという議論が生じている。この方向を研究し、日本法でも、SDGsに会社法が配慮する立法や解釈を行うようにしく契機としていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス蔓延のため、国内旅費や海外旅費を使うことができなかった。2022年度で、旅費や来年に施行されるドイツ民法・ドイツ商法改正に関する書籍、及び、EUにおけるSDGsと会社法に関する書籍を購入する予定である。
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