最終年度である2023年度には、本研究の集大成として、担保価値維持義務、事業担保論も視野に入れて、一冊の研究書に取りまとめる作業を行った(片山直也『財産の集合的把握と詐害行為取消権(詐害行為の基礎理論 第2巻』(慶應義塾大学出版会・2024年3月) 本研究では、2019年度に海外研究拠点であるパリ第2大学(フランス・パリ)、マギル大学(カナダ・モントリオール)、ブリュッセル自由大学(ベルギー・ブリュッセル)において在外研究を行い、その成果を取りまとめて、片山直也「動産・債権担保法制をめぐる二元的構成の新たな二つの動向―フランス法を起点としたベルギー法・ケベック法の比較研究の試み―」法学研究94巻11号(2021年11月)1-73頁を公表した。そこにおいては、それぞれ異なる外在的要因によって、「機能的アプローチ」に基づく「一元的構成」を導入したケベック法とベルギー法において、その後、有価証券のペーパレス化に対応した金融担保法制の変容を契機として 広く債権担保について、動産担保と区別した取り扱いを行うという新たな「二元的構成」の傾向が看取されるようになり、動産担保について「有体動産質(gage)」と「無体動産質(nantissement)」の区別する「二元的構成」を採るフランス法に再び回帰している点を分析検討し、わが国における動産債権担保法改正への示唆を抽出している。さらにそれを補完する3つの翻訳を公刊している。 以上の成果を踏まえて、2022年12月17日に海外拠点であるパリ第2大学等から4人の研究協力者を招聘して、日仏担保法セミナー「フランス担保法の改正」を開催し、さらに、2022年2月12日に日仏法学会で報告を行っている(「2021年フランス担保法改正オルドナンスの概要―動産・債権担保を中心に―」日仏法学32号(2023年・日仏法学会)67頁以下(齋藤由起教授と共同執筆)。
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