研究課題/領域番号 |
19K01377
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
田頭 章一 上智大学, 法学研究科, 教授 (80216803)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 倒産 / 倒産債権者 / 組分け |
研究実績の概要 |
本年度は、研究のための出張を自粛していたため、倒産手続における「関係権利者」の組分けに関する諸問題について、国内外の文献研究を中心にして、検討を進めた。 その主たる成果として、2021年10月に発表した「事業再建型倒産手続における関係権利者の「組分け」に関する覚書」がある。この論文では、組分けの意義、その各論点への影響について、商取引債権者に対する早期包括弁済の許可の要件等を題材に検討を加えたものである。会社更生手続の決議場面での伝統的な「組分け」や関係権利者の「分類」の意味など、基本的な研究成果を踏まえて、本来「組分け」に基づいてなされるべき早期包括弁済の実務について批判的に検討した。個別的な解釈問題へ「組分け」の意義を探るという本研究の目的を達成するための試みの一つと位置付けている。 そのほか、現在進行中の担保法制の見直しの内容についてフォローし、担保の範囲の拡大は、必然的に倒産手続における担保権の処遇にも影響を与える、という考え方の下、「組分け」の観点からの検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実態調査を含む外国倒産手続実務に関する研究が遅れている。 他方で、広範囲の債権等を手続に組み込むと手続が「重く」なるから、それを避けるために、関係権利者の範囲を狭め、組分けを避けるのが望ましいという考え方に対する応答として、複数の種類の権利者を手続に関与させること自体が「重い」手続につながるものでは必ずしもなく、逆に充実した倒産手続の円滑な進行のために組分けが機能するということもありうるこなどの具体的な知見を重ねつつある。 また、個別的な解釈問題へ「組分け」の意義について、研究を進めている。 さらに、現在、担保法制の見直しが進む中で、新たな担保法制の下での「組分け」の問題も、本研究開始時には存在しなかった重要な問題として認識している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針の柱は、次の2点である。 一つは、関係権利者の「組分け」に関して得つつある知見の有用性・実現可能性をさらに説得力を持って議論するために、広範囲の「関係権利者」を手続に組み込むように見える外国倒産手続の運用状況を調査し、それに基づいて、わが国の実務にどのような形で「組分け」を取り込むことが適当かを提案することである。 第二に、わが国の担保法改正動向を踏まえて、倒産手続における担保権の処遇を「組分け」の観点から検討することである。 2021年度は本来研究最終年度であったが、22年度まで延長を申請したのは(その後承認を得た)上記のような作業を念頭に置いたものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内・海外出張旅費を2022年度に繰り越したこと、また担保関係の内外書籍等の購入費用が予想されることなどが理由である。したがって、2022年度の使用計画は、それらの費用と、研究補助謝金等が中心になると考えている。
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