研究課題/領域番号 |
19K01377
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
田頭 章一 上智大学, 法学研究科, 教授 (80216803)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 倒産債権者等の組み分け |
研究実績の概要 |
22年度前半は、予定していた海外調査等ができるようになることを期待したが、先の見えない状況が続いたことから、研究内容を海外文献研究を中心行う方針に少しずつ転換した。文献研究の幅を広げるため、アメリカを中心としつつ、欧州議会によるEU倒産指令(2019年)に関する文献資料を広く収集して、研究を進めた。また、わが国では、法的整理だけでなく、準則型の私的整理においても、対象債権者をどの範囲に絞るか、債権者間の平等の観点から「債権者等の組分け」(以下「組分け」ということがある)のあり方をどのように考えるべきか、などの観点から、組分けをめぐる新しい議論の展開がみられ、これも研究対象とした。 アメリカの事業再建手続では、従来から、債権者等の組分けが恣意的に行われ、事業再生のための交渉のバランスが歪められる恐れがある点が指摘されてきた。これを受けて、EU指令を受けたヨーロッパの国々では、組分け基準の客観化に向けて、独自の発展の兆しがみられ、組分けの光と影を分析する際の重要な視点が得られた。 一方で、わが国では、準則型私的整理の発展形態として、<債権者の多数決+裁判所の認可>により再生計画を発効させる制度の可能性が議論されている。その議論をフォローするなかで、そこでも債権者等の組分けからのアプローチ(たとえば、会社法上、社債権者集会で多数決による社債の処遇が認められるのは、社債という権利の合理的な「組分け」が可能であるからであるが、新制度はそういえるか、など)が意義をもつのではないかという問題意識を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究開始時点では、研究期間(当初2019~21年)前半で、「債権者等の組分け」(以下「組分け」という)の多様な意義を明確にすることを目的として研究を行い、後半では、理論上および実務上重要ないくつかの論点に関して、組分けが幅広い手続で原則となっている他国の事業再建手続(とくにその実務)とわが国のそれとの比較により、組分けに関する各国法制とその運用の類型を提示することを考えていた。 しかし2020年度初めごろからの感染症の影響で、海外での実態研究の道が閉ざされるなど研究活動が制約(その中には個人的事情に起因するものもあった)を受け、その後は研究再開のタイミングを待つなどしていたため、十分な研究活動は実質的に中断せざるを得なかった。しかし、概ね22年度後半からは、文献研究を中心とする方針に転換した結果、現在は、この方針に沿って研究を進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、2022年度後半から文献研究を中心とする方針に転換して、文献・資料の収集・調査を進め、EU指令を受けたヨーロッパ諸国の「組分け」の制度設計の調査により、アメリカ、日本との「債権者等の組分け」の制度と考え方の興味ある比較ができるものとの見地に至った。今後は、そのような比較研究を踏まえて、わが国では一般的に手続を重くするとして、消極的位置づけがなされがちな「組分け」の積極的意義を明示するという方向性で、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の研究が計画通り進捗せず、研究期間を2023年度まで延長させていただいた関係上、研究費についても、2023年度に利用することとなった。 この研究費については、研究方法を文献調査中心に変更したことから、主として研究課題に関する内外の文献の購入に充てる予定である。
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