コロナ禍で2020年、2021年とも外国での資料収集やインタビュー調査、成果報告などができず、研究期間を1年延長したが、2022年度はようやくこれらを行うことができるようになり、前年度の不足分をカバーするべく、ドイツにおいて上記の調査を行った。具体的には、ドイツ・フライブルク大学外国並びに内国訴訟法研究所において、研究室を与えられ連日資料調査とインタビュー調査(シュトゥルナー教授、ブルンス教授など)を行ったほか、調査で収集した資料やインタビューの結果などの一部を整理することができた。2022年度は、5月に出版された注釈民事訴訟法第3巻において担当した、135条の将来給付の訴えで将来給付を認容する判決の既判力を取り扱った。また早稲田大学法学会百周年記念論文集第2巻に「既判力の主観的範囲について」と題する論文を発表した。いずれも本科研費補助金の成果である。これらの成果を踏まえてフライブルク大学において、報告を行ったところ、シュトゥルナー教授から既判力の主観的範囲研究における実体法の重要性の指摘を受けた。その後はこれに従い、特に物権的請求権をめぐる判決の既判力の主観的範囲について、物権的返還請求権ならびに物権的妨害排除請求権の違いを意識しながら、実体法の研究をしている。 さらに2023年2月に「手続法から見た家事調停の現状と課題」と題する論文をケース研究346号に発表した。そこではフライブルクにおける収集資料を利用して、訴訟上の和解の承継人への効力を巡る議論を踏まえた叙述が含まれている。和解は特にその法的性質から、実体法との関係が深いため、実体法的考察なしに既判力の主観的範囲を論じることができない状況であることを実感した。今後ともこの方面での研究を進めていきたいと考えている。
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