医師責任法における各種の責任法理がどのような相互関係にあるのかを、それぞれの責任法理の保護法益は何かという視点から検討して解明することに努めた。その結果、第一に、治療を受けるか否かを患者自身に決定させるための説明義務では、医師の過誤の態様に応じて保護法益が異なりうること、第二に、遺族に対する説明義務について、遺族の範囲を定める基準や方法の検討が不十分であること、第三に、療養方法等の指導により診療成果を確保するための説明義務について、保存的治療も説明対象となること等の知見を得たほか、司法の場で実践しうる責任法理の構築には、法学のみならず医療政策等隣接諸分野の知見も必要であることを明らかにした。
|