研究課題/領域番号 |
19K01389
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小野寺 倫子 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (10601320)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境保護 / 契約 / 民事法 / フランス法 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、フランスにおける環境法の契約化に関して、生物多様性、自然及び景観の回復に関する2016年8月8日の法律第2016-1087号(生物多様性法)によって創設された環境従物債務制度および気候の悪化への対策及び気候の悪化の影響に対するレジリエンスの強化に関する2021年8月22日の法律第2021-1104号(気候変動対策・レジリエンス強化法)における、特に消費者取引の局面での環境配慮に注目して検討を行った。 環境従物債務制度について、生物多様性法では、当該法律の審署から2年の期間において、フランス政府が報告書を作成し、元老院および国民議会に提出するものとされていたところ、予定より遅れたものの、2021年1月付けで政府による報告書が公表された。また、立法から一定の期間が経過し、フランス民事法学においてもこの制度に関して、一定の議論の積み重ねがあった。今年度においては、これら立法後のフランスにおける実務および学説の進展や成果を踏まえて情報の分析と検討を行い、その成果を論文にまとめた(2022年公刊予定)。 2021年8月に立法された気候変動対策・レジリエンス強化法の立法内容は多岐にわたるけれども、消費者を環境保全の重要なアクターと位置づけ、特に、環境政策における情報的手法を活用して消費者契約における環境保護の推進を目指す点を一つの特徴として指摘できる。2021年8月に立法されたばかりであり、2021年度の研究において収集できた情報は限定的ではあったが、入手できた資料を基に立法の概要の分析・検討を行い、日本法における当該問題に関する法的対応の現状と比較して、序論的考察を行い、その成果を論文にまとめた(2022年公刊予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年から現在まで、世界的な感染症の流行が続いており、特に研究対象国であるフランスにおける感染症の影響も深刻であることもあって、研究方法は文献資料の分析にほぼ限られた状況が継続している。このような事情の下、分析対象である文献資料に関しても、収集手段が限定的であり、所属先図書館スタッフの献身的協力により、すでに日本国内に存在する資料についてはかろうじて収集できているが、フランスの新規の研究成果へのアクセスが難しい状況である。さらに、フランスでの新規の研究成果の公表等も感染症の流行以前と比べるとペースやボリュームが低下している。研究文献の刊行情報を得て、入手を試みても、公刊の遅延やキャンセルが相次いでいる。物流の世界的な混乱の影響とみられるフランスからの文献取り寄せに要する期間も長期化しており、すでにフランスで公刊されている資料についても、入手が順調ではない。 このような事情を踏まえて、インターネットの活用による情報収集の強化、現在までに入手できた資料・情報、研究開始後の立法状況等を踏まえて分析対象とする契約の具体例を一部変更する等の対応をしているが、当初の計画と比べて研究が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
上記進捗状況に記載のとおり、現在のところ、感染症流行の影響により、研究方法が文献資料を用いた研究に限定されており、かつ、今後の研究状況の変化についてもいまだ見通しが立たない。このような事情にかんがみて、2022年度においても引き続き文献資料の収集と分析を中心的手法として研究を進めることを予定している。 具体的には、2021年度に続き、2021年8月にフランスで立法された気候変動対策・レジリエンス強化法を中心に、環境法の契約化について、特に消費者取引の側面に焦点を当てて研究を行う。当該立法は、本研究の開始後に立法された法律であって研究計画時に具体的な検討対象として想定していた法律ではないが、環境法の契約化に関連して今後日本法への参照モデルとして重要な意義を持ちうる事例である。気候変動対策・レジリエンス強化法は、フランスでも重要かつ比較的大規模な立法として位置付けられており、今後のフランスの学説において当該立法に関する議論展開が期待できると予測している。2021年度の時点においては、立法とほぼ同時に検討を行ったため、フランスにおいても学説による議論はほとんど始まっておらず、フランス政府による情報・資料に分析対象が限定されたことから、2022年度においては、フランスの民法、環境法および消費者法の各分野での議論について、情報の収集と分析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響により、旅費の支出がなかった。また、フランスからの文献資料の入手に関して、発注した図書の納品の遅延や出版予定のキャンセルなどが相次ぎ、予定よりも支払額が少なくなった。 2022年度当初においては、研究対象国への渡航が難しい状況が継続していることから、文献調査に必要な資料収集費用として使用することを予定している。今後状況が変化した場合には、現地調査等の旅費として使用する。
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