2021年5月には、筑波大学における研究会において、契約締結時における保証人の保護の制度について、この時点における、①日本の制度(民法改正によって設けられた、保証意思宣明公正証書の作成(465条の6)、保証人に対する情報提供義務(465条の10)、従来から設けられていた制度(錯誤・詐欺・情報提供義務))と②フランスの制度(手続要件、2016年債権法改正によって新しく設けられた規定(情報提供義務(1112-1条))、従来から規定は存在していたがその内容が変更された規定(錯誤(1132条など)・詐欺(1137条など))、助言義務、警告義務など)に関して、報告を行った。 保証人の錯誤が問題となる場合には、債務者の支払い能力に関する錯誤、他の担保の存在に関する錯誤、など様々な場合がある。これらの場合、しばしば、裁判所は、「単なる動機(simple motif)の錯誤にすぎないため、保証契約は無効とならない」、と判断することがある。1135条1項が規定する単なる動機の錯誤には様々な問題がある。例えば、①単なる動機の錯誤は、錯誤の問題とすべきか、あるいは、錯誤の問題ではないとすべきか、②本質的性質に関する錯誤と単なる動機の錯誤は、条文上は区別されているが、明確に区別をすることができるか、③単なる動機の錯誤により契約の効力が否定されるには、どのような要件が必要か、などの問題がある。これらの問題について、最新のフランスにおける判例・学説を分析し、検討を行った。この検討内容は、筑波大学の紀要において2022年6月に公表をする予定である。
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