研究課題/領域番号 |
19K01394
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡部 美由紀 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40271853)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 民事執行法改正 / 債務者情報の取得 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に続いて、民事執行制度全体の議論状況へ目配りをしつつ、債務者情報の取得に関する国内外の文献の収集・分析等を行った。 改正民事執行法においては、債務名義の制限の廃止(旧197条1項括弧書きの削除)、罰則の強化に加え、債務者以外の第三者からの情報取得も可能になり、旧法よりも債務者情報の取得が容易になったといえる。しかし、それでも債務名義の存在を前提とした要件設定になっていることから、これを利用できる場合は限定される。例えば、消費者裁判特例法に係る訴訟においては、債務者として逃げ足の速い悪質事業者が想定され、実効的な民事執行により消費者被害を回復する前提として債務者財産の保全(仮差押え)が重要な意味をもつ。その申立てをするにあたり、迅速に債務者情報を取得をする必要性は極めて高いが、消費者裁判特例法に係る訴訟における原告である特定適格消費者団体は、直接に債務者に対する債権を有しているわけではなく、債務名義を取得していることは考えられないから、民事執行法における債務者情報取得以外の方法による債務者情報の取得を検討せざるを得ない(なお、消費者裁判特例法に係る訴訟に限り仮差押えの申立て要件を緩和するという方策もありうるところである)。このような場合を含めて、実効的な民事執行のための債務者情報の獲得を総合的に検討をする必要がある。研究成果として、消費者裁判手続特例法に係る訴訟の執行・保全の問題について原稿を1本執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大による自粛要請等により、令和2年度も、対面での研究会開催や海外出張が困難な状況にあった。そのため、とりわけこれまで定期的に行われていた弁護士・裁判官が参加する民事執行法研究会が開催されず、実務家との情報交換の機会を十分に持つことができなかったことや、現地に出向いて外国人研究者と情報交換をする機会を持つことができなかったことから、現状認識や問題点の分析が十分であるとはいえない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、これまでの研究成果をまとめ、研究会等で報告し結論を十分に検討した上で、公表に向けて原稿を執筆する。新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限状況に照らし、研究年度内に対面で国内外の研究者と意見交換することは容易でないことが想定されるため、文献を中心に報告をまとめ、基本的に、オンラインでの意見交換や研究会報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大のために、海外・国内出張を行うことができず、その予算として計上していた額を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。 本年度も、現時点においては国内外の出張が実現する見込みは極めて低いため、その分については、必要な文献の購入費用や、オンラインでの打ち合わせ等のために必要なPC機材の購入費用として使用する。
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