研究課題/領域番号 |
19K01395
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村上 正子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (10312787)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 子どもに優しい司法 / 子の養育 / 子の利益 / 協議離婚 / 子の意見表明権 / 養育計画 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続きコロナの影響があり、国内外の現地聞き取り調査の実施を控えたため、文献資料に基づく検討を中心に行った。 現在進行中の、法制審議会家族法部会における、離婚後の子の養育の在り方に関する議論を検討し、実体法において、親権・監護権のとらえ方が変化し、親権者・監護権者をいずれの親にするか、という二者択一のとらえ方から、離婚時の子の養育に関する取決めの内容を、より具体的に協議ないし審判によって判断する際の基準や方法が明確にされることによって、手続がどのように変わり得るかを検討した。 比較法としては、主に子ども中心の審理のあり方について、EUにおけるchild friendly justice(子どもに優しい司法)に関する議論と、オーストラリアにおける家族法改正に関する議論を参照し、裁判以外の解決方法のあり方を検討した。その際には、離婚全体の9割近くが協議離婚であり、裁判所や法律専門家が関与しないというわが国の特徴を踏まえて、行政機関において、離婚時の適切な取決めをどのように確保しうるか、また子どもの意見を手続にどのように反映させるか、などについて、具体的に検討した。 検討の結果、実体法の改正が実現した場合には、子の養育に関する概念自体が変わることに伴い、手続もその趣旨と整合するように見直す必要があること、裁判による紛争解決だけでなく、行政機関における事前の講習や、法律家以外の専門家との連携の下で、離婚時の協議をサポートする体制を作るなど、それぞれの家族のニーズに合わせた多様な手続を設ける必要があることがわかった。 以上の研究実績については、論文で公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度と同様に、国内外の聞き取り調査が出来ていないことに加え、法政審議会家族法部会の議論の検討に時間を要し、ハーグ子奪取条約以外の国際条約における中央当局制度の分析が後回しになってしまっているため、進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、中央当局制度を採用している国際条約の検討・分析をすると同時に、引き続き、法制審議会における議論を検討していきたい。また、離婚後の子の養育の取決めの確保、さらにはその履行の確保について、行政機関や家庭裁判所調査官以外の専門家がどのように関与しうるか、司法との役割分担をどのように考えるべきかについて、具体的な提案を示していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大の影響により、予定していた国内外の調査が出来なかったため。 今後の移動制限緩和の状況を見ながら、適宜調査を再開する予定である。
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