研究課題/領域番号 |
19K01397
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神野 礼斉 広島大学, 法務研究科, 教授 (80330950)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医療契約 / 身体拘束 / ドイツ世話法 / 成年後見法 |
研究実績の概要 |
成年後見制度の利用の促進に関する法律11条3号は、「成年被後見人等であって医療、介護等を受けるに当たり意思を決定することが困難なものが円滑に必要な医療、介護等を受けられるようにするための支援の在り方について、成年後見人等の事務の範囲を含め検討を加え、必要な措置を講ずること」とされる。本年度は、ドイツにおいて成年後見人が医療行為や身体拘束の問題にどのように関わっているのかを考察する論考を発表した。 「ドイツにおける医療契約法」(広島法学43巻4号)は、私法上の契約として民法にも明文化された医療契約法について、関連する法制度にも目配りしつつその概要を紹介するものである。ドイツでは、契約を締結するという法律行為(医療契約)と、その医療を受けるかどうかの意思決定(医療同意)は明確に区別されており、それぞれについて具体的な法制度が整備されている。このようなきめ細やかな法的手当ては、わが国にとっても参考になるものと思われる。 「患者の身体拘束の要件に関するドイツ連邦憲法裁判所判決」(広島法科大学院論集16号)は、公法上の収容中に行われた精神疾患の被収容者の身体拘束の許容性について判断した、ドイツ連邦憲法裁判所2018年7月24日判決を紹介するものである。もとより、この判決は個別の州法を対象とするものであり、差し当たっては各州に対して効力を有するものであるが、ここで示された準則は、世話法(成年後見法)など連邦レベルでの立法にも影響を及ぼしつつある。患者の自由を制限する措置については必ず司法が関与すべきとする態度(裁判官の待機業務を命ずるなど)は、わが国の司法インフラの現状を考えると直ちに取り入れることは困難かもしれないが、重要な視点ではないかと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた任意後見制度の運用状況に関する検討が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って、市町村長による後見等開始の審判の請求の積極的な活用、市民後見人の養成などについて引き続き検討を続けたい。
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