研究実績の概要 |
オンライン上の取引プラットフォームの民事責任の可能性につき、委任や仲介、第三者のためにする契約等の議論及び、従前、取引に介在する事業者が利用者に損害が生じうる情報を把握し、一定の対応が取りうる場合に信義則上の情報提供義務が生じるとする宅建業者等の責任に係る判例準則を参照した理論の確認、事業者の規約や各種会議の報告書などを参考に責任追及の可能性の検討を進めた。 マッチング型事業者は出店審査や規約を通じて出店者の監督や、ステルスマーケティングや検索結果の表示などの適正化に向けた自主的取組みを始めており、逆に消費者によるレビューに関しても削除等を行い、必要に応じた逐次の規約変更も行われている。また、利用者の閲覧等を含む取引関連情報の移転等の議論も始まっている。これらは、明示的な契約上の義務として、または取引上の社会通念の形成もしくは一般義務醸成の基であり、民事上も欺罔的な情報などへの警告等の情報提供義務を生じうる現状と評価できる。 また、プロファイリングを介して行われるターゲティング広告などによる、消費行動の誘導・統制に対して、消費者契約法4条3項三~六号に追加された不安をあおる告知等の困惑取消しの対象となりうること(拙稿「つけ込み型勧誘における消費者の属性の位置づけ」『総合政策』21号24頁)、景品表示法26条の管理措置義務の対象として、インターネット上の広告主、プラットフォーム事業者の責任について検討を始めている。ただし、機会の喪失の構成の可否、個人情報保護やビジネス機会の確保とのバランスを考慮していく必要がある。 諸外国との規律の動向に関しては、Christiana N. Markou, “Consumer Protection, Automated Shopping Platforms and EU Law.”, Routledge 2020.の訳出を中途まで行った。
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