研究課題/領域番号 |
19K01402
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
深川 裕佳 南山大学, 法務研究科, 教授 (10424780)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 契約の失効(caducite) / 相互依存的契約の終了 |
研究実績の概要 |
本研究は,電子マネーやクレジットカードのようなキャッシュレス支払手段が不正に使用された場合におけるリスクを消費者と事業者の間において合理的に分配するルールを検討することを目的とするものである。 キャッシュレス決済は,複数の主体間で連鎖的に締結される契約によって形成されるネットワークによって実現されており,上記研究目的に照らして,本年度は,このようなネットワークを構成する契約の一つが消滅した場合に,他の契約に影響が生じるかどうかという問題を考察するにあたり,フランスにおける立法や学説を参考に検討して,成果として公表した(深川裕佳「相互依存的契約の終了 : フランス民法典における契約の失効(caducite)を参考にして」南山法学43巻2号(2019年)1-53頁)。契約の失効(caducite)という概念によって提起される問題は,有効に成立した契約であっても,その成立後になって,その「契約の本質的な要素」,すなわち,当該契約の存在理由が失われるという事件が生じた場合に,当事者をその契約に拘束し続けることができるかどうかというものである。フランスにおいて,この問題の解決策は,一つの契約についてだけでなく,相互依存的な複数の契約(同一当事者間で締結されるもの,及び,三者以上の多数当事者間で締結されるもの)についても,契約の本質的な要素が失われた場合には,当該契約を終了させて,当事者を契約関係から解放するという方法として,フランス民法典に規定されている。キャッシュレス支払手段が不正に使用された場合について考察するにあたっては,このように,まずは有効な契約が消滅した場合の法律関係を解明しておくことが有益であるものと考えられる。なお,当初は,日本における実態調査を実施することを検討していたものの,新型コロナウイルス感染症の影響によって,実態調査を行うことはできなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は,日本における実態調査を実施することを検討していたものの,新型コロナウイルス感染症の影響によって,実態調査を行うことはできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の計画は,EUおよびフランスにおける最新の法改正・判例の調査(PSD2及びフランス通貨金融法典の最新改正)について検討することであり,現在,資料を集めつつあるものの,新型コロナウイルス感染症の影響によって,洋書の入荷が困難となっており,これまでに集めた手持ちの資料を分析していくことによって,これを補いつつ,研究計画を遂行することを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響によって,実態調査や資料収集のために予定していた出張を行うことができなくなり,また,海外から購入を予定していた洋書も購入できなくなった。そのため,次年度使用額が生じた。
|