研究課題/領域番号 |
19K01402
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
深川 裕佳 南山大学, 法務研究科, 教授 (10424780)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電子マネー / 不正利用・不正使用 / 消費者保護 |
研究実績の概要 |
本研究は,電子マネーやクレジットカードのようなキャッシュレス支払手段が,権限を有しない者によって不正に使用された場合に生じるリスクを,消費者と事業者の間において合理的に分配するルールを検討することを目的とするものである。本年度は,上記目的に照らして,電子マネーを対象に,フランスにおける議論を検討した。その結果は以下のとおりである。 フランスにおいては,通貨金融法典において,電子マネーに適用される各種の規定が設けられている。この中に,その保有者以外の第三者(無権限者)が電子マネーを不正に使用(以下「無権限利用」という)した場合に関する規定がある。この規定は,電子マネーによる支払いだけでなく,口座振込みやクレジットカードによる支払い等についても適用される横断的なものである。わが国では多数の電子マネー発行者が存在しており,それだけでなく,1つの発行者が電子マネーの発行と同時に,クレジットカード(包括信用購入あっせん)や資金移動(為替取引)などの複数のサービスを提供していたり,1つの電子マネーについて現金・銀行口座を利用した前払いによるチャージだけでなく,クレジットカードを利用した後払いによるチャージができるものもあったりするという複雑な状況にあることから,フランスにおけるような横断的な規制をわが国でも導入することによって,保有者は,その利用する支払手段の無権限利用におけるリスクを予測することが可能になるものと思われる。 また,フランス通貨金融法典における無権限利用のリスクは,保有者からの無権限利用の通知を要件として,原則として電子マネー発行者が負う。そのうえで,認証に暗証番号等を利用するものや少額電子マネーについては特則が備えられてその特徴に見合ったルールが規定されている。わが国においても,最低限の消費者保護を実現するための水準を考えるにあたって参考なるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の報告書に記載した本年度の課題をおおむね検討し,論文としてまとめて公表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度に当たる次年度は,キャッシュレス支払手段の不正使用におけるリスクを消費者と事業者の間において合理的に分配するような,支払手段の違いを超えた統一的なルールを設けることを検討するという本研究の目的に照らして,本年度の研究成果を発展させる予定である。このために,電子マネーサービスの以外のほかのキャッシュレス決済サービスの不正使用に係る問題についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,購入することを予定していた物品の在庫が不足して,予定通りに購入することができなかったため。
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