研究課題/領域番号 |
19K01410
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉永 一行 東北大学, 法学研究科, 教授 (70367944)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 信託 / 金融商品販売 / 公法と私法の峻別 |
研究実績の概要 |
私法と公法の役割分担という問題意識のもと、昨年度はパック旅行契約を取り上げてドイツ民法(さらにそこに影響を与えているヨーロッパ法)における規制内容を明らかにしてきた。もっとも日本においては旅行契約(標準旅行約款)をめぐる議論の蓄積が公法の領域にしろ、私法の領域にしろ、必ずしも豊富ではないことから、旅行契約の研究に固執することはせず、当初の研究計画では予定していなかった他の契約類型における規制内容の分析を進めることとした。 そうした分野として、パック旅行契約と同様に行政官庁による規制が大きな意味をもつ領域である金融取引(信託契約および元本割れのリスクのある金融商品の販売に関する契約)に着目し、公法におけるルール(免許・許可制、広告・勧誘や取引締結にあたっての種々の義務の設定、行政による調査監督や処分の権限)により私法的な取引における当事者の保護が図られる場面について研究を進めてきた。具体的には、業として信託を引き受ける者(信託銀行)が委託者との間で信託契約を締結する場合において、信託業法や金融商品取引法においてどのような公法的規制を受けるのかを条文に即して明らかにした。 さらに、家族信託において信託契約の内容を弁護士や司法書士といった法律専門家が作成する場面を念頭において、これらの専門家に対して、どのような規制を及ぼすことが必要であると考えられるかを検討し、その内容を論文にまとめ公刊した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたとおり、研究の順序を入れ替え、また取り上げる領域を変更しながらではあるが、私法的な取引に対して公法的なルールが意味をもつ場面において、日本国内外における規制の実情を明らかにするという目的は大きく達しつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きドイツを中心とした比較法的研究も用いながら、旅行契約、金融取引その他公法ルールが私法上の取引における当事者の保護にどのように資するかという視点で検討を進めていく。当初の研究計画で予定していなかった領域に踏み込むこととなるが、むしろ当初の研究計画で明らかにした問題意識を検討するに適した領域で検討することで、有益な研究になるものと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね予算通りの執行を行なってきた。若干の残額(次年度使用額)が生じることとなったが、次年度分と合わせて資料収集のための費用に充てることとする。
|