研究課題/領域番号 |
19K01412
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
高田 恭子 大阪工業大学, 知的財産学部, 准教授 (70569722)
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研究分担者 |
藤間 公太 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 第2室長 (60755916)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 面会交流 / 子どもの権利 / 離婚 / 英国家族法 / 社会調査 / 家族法 / 親権 / 面会交流支援 |
研究実績の概要 |
面会交流実態調査となる社会調査では,調査項目の精査,Web調査システムの整備を行った。協力者を含めた共同研究メンバーに加えて,面会交流支援を行う団体に協力を求め,分析に必要な質問項目の検討が可能となった。実態調査の対象は,離別後5年以上経過した親子である。経年変化や長期的視野で親と子どもの意識を含めた調査を可能としつつ,多くの協力を得られるように質問項目を絞るために,質問を工夫し精査した。Web調査実施準備を完了することができた。 英国調査として,2019年9月に英国実地調査を行い,面会交流支援の実態を調査するとともに,社会での受容を調べる目的で調査対象の拡大を図った。別居親母親を支援する団体,別居親父親団体およびDV被害者救済の英国最大の団体「Women's Aid」の訪問調査が実現した。2019年10月末にも訪英して英国子ども交流センター全国協会(NACCC)総会に出席し,各地の交流センター運営者や子ども交流センターと協力関係を築く家庭裁判所裁判官,DV救済機関,父親団体と意見交換し分析を深めることができた。 研究成果の発表として,台湾で開催された国際学会でワークショップを実施した。本WSでは,DVケースにおける面会交流の取扱いをテーマに,独立ソーシャルワーカーで台湾のDV制度構築に貢献してきたFran Gauと英国で日本の家裁調査官にあたる全国組織,Cafcassのロンドン地区ディレクター(実質の全国ディレクター)も務めたNACCC所長のElizabeth Coeを招聘して検討を深めることができた。日本で開催した公開シンポジウム「子どものための面会交流支援~イギリスから学ぶ~」では,英国での面会交流制度の展開についてNACCC所長のElizabeth Coeを基調講演者として招聘した。申込者を断らなければならないほどの関心が寄せられ,大きな成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国調査とその分析は,2度の訪英およびNACCC所長のElizabeth Coeの招聘によって,予定よりも大幅に研究を進めることができた。また,英国における離婚法制度および司法と連携する当事者支援の実態について,日本ではほとんど報告されていないため,日本で公開シンポジウムを開催することができたインパクトは大きい。よって,研究項目の1つである英国制度研究の進捗は順調に進んでいると評価することができる。 一方で,日本の実態調査として計画している社会調査について,調査項目を精査し,慎重に議論した方がよいとの判断から,共同研究者の社会学者,協力者の弁護士に加えて面会交流支援に関わる人々を加えての議論を重ねたこと,また,本研究で実施したい調査規模から算出されるWeb調査委託にかかる予算が当初予算を大幅に上回り,本研究で実施するWeb調査を,事前調査の位置づけで規模を小さくして実施せざるを得ないと決断した。それらのプロセスに時間を要したため,Web調査の実施を遅らせて次年度に繰り越すこととなった。よって,研究項目の1つである社会調査の進捗はやや遅れていると評価することができるが,同時に,それに必要な修正は施すことができている。 総合的検討は,研究会開催毎に行い,各自の論文執筆においても行っているが,Web調査結果を踏まえた検討は,実施後に行うことになる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,社会調査(Web調査と実地ヒアリング調査)の実施を中心に進める予定であったが,Covid-19社会対策の関係で,その計画も大幅に遅らせる必要もでてきそうである。より効果が大きいように,社会情勢をみて実施時期を設定してWeb調査を実施する。Web調査結果から抽出して実施する予定のヒアリング調査も同様に,Covid-19に十分に対応できるようにテレビ会議システムを使用して実施するなど,その実施方法についても再検討して可能な限り進めていく。必要があればさらに実施開始を延期することも考える。 英国制度研究は,初年度に大きく展開することができたので,それをとりまとめて論文を発表することを今後の計画として研究を進める。 総合的検討として,他の社会学者や当事者支援団体を迎えた拡大研究会を年度内に開催する。Covid-19対策としてWeb会議システムでの開催の必要性も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
社会調査として実施するWeb調査について,個人情報保護の観点や,一定期間調査をオープンにして実施する必要性から,当初予算よりも大幅に経費がかかることが判明した。その予算分を前倒し請求したが,その開始時期を,Covid-19の社会情勢から2020年度に遅らせたため,Web調査委託費の精算および調査にかかる案内チラシのデザインおよび印刷費の精算が納品後となるために繰り越す費用が発生した。社会調査の準備は整っており,すぐに実施する事ができる体制にあるため,その執行は2020年度になされる予定である。
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