(研究期間を延長したことによる)本年度は、MBOおよび支配株主による従属会社の子会社化を主たる研究対象としていた前年度までとは異なり、敵対的買収について研究を進めた。その研究の成果として、敵対的買収に対する防衛策の行使(対応方針の導入とそれに基づく対抗措置の発動)を差し止めるかどうかを判断するに際して、その行使が不公正なものではないと認められるように手続として用いられる株主意思確認総会における株主の意思がゆがめられているものではないかについて実質的に審査する必要があるということ、さらには、その審査において着目すべき点を明らかにすることができた。加えて、株主の意思がゆがめられていないとしても防衛策の行使の相当性については一定の基準に従って慎重に審査すべきであるということを明らかにすることができた。 そのような本年度と前年度までの研究期間を通じて得られた成果をまとめれば、利益相反の懸念がある買収対象会社の取締役会による行動(MBOおよび支配株主による従属会社の子会社化などのような友好的買収の場面であれば買収に対しての賛同の意見表明であり、敵対的買収の場面であれば買収に対しての防衛策の行使)を規律づけるためには、その行動が公正であるまたは不公正ではないと認められるように用いようとする手続に対して実質的な審査を行うことが必要であることをあらためて確認することができたことと、その審査の具体的な基準をある程度提示できたことである。
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