研究課題/領域番号 |
19K01415
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
蘆立 順美 東北大学, 法学研究科, 教授 (60282092)
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研究分担者 |
成瀬 幸典 東北大学, 法学研究科, 教授 (20241507)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 著作者人格権 / 人格的利益 |
研究実績の概要 |
本研究は、著作者人格権について、その基本的原理や特性について検討を行うものであり、他法における人格的利益の保護に関する議論と比較、相対化することにより、著作者人格権の特性について分析を行う点に特徴を有している。 本研究は、2名の研究者により実施され、初年度である2019年度においては、各担当法分野に関して調査・研究を進めた。まず、著作権法担当の研究代表者は、我が国の著作者人格権に関する資料の収集・整理・分析を実施した。著作者人格権の中でも、特に氏名表示権(著作権法19条)に焦点をあて、経済的権利である著作権との関係性(特に、引用における出所表示(32条、48条)との関係)についても意識しつつ、氏名表示権の保護する人格的利益の独自性を中心として分析を行った。二次的著作物に関する原著作者の氏名表示権に関しては、保護される具体的利益に関して、ほとんど言及・分析がなされておらず、その内容の深化が必要であることが明らかとなった。なお、氏名表示権を分析対象として選択したことは、次年度以降に予定されているパブリシティ権に関する調査研究との比較が行いやすいことを意識したものであり、著作者人格権の特性を相対化して検討するうえで有益と考えたためである。 また、刑事法を担当する研究分担者は、本研究課題を遂行するための前提となる、刑法における人格的利益の保護に関する研究を進めた。その研究成果の一部については、判例評釈として公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者及び研究分担者が、それぞれの担当分野に関する資料の収集及び分析を進めており、研究代表者は、著作者人格権の氏名表示権について、研究分担者は刑法における人格的利益の保護について、概ね順調に検討を進めている。なお、それぞれの調査や分析により得られた情報や知見については、一部、情報共有を始めてはいるが、今後、さらに情報共有を進めた上で、各法分野の知見を融合させた分析を実施することが必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、各研究者における2019年度の研究成果の詳細について、研究担当者間で情報共有を行い、両者の知見を活用した分析を進めるとともに、それを踏まえて、今後の調査、分析対象について、研究担当者間で意見交換を行い、2020年度以降の研究計画について、その対象や方法をさらに精緻化することを予定している。 2020年度は、研究代表者においては、著作者人格権の調査・研究に関し、同一性保持権等にも対象を拡大して継続し、総合的な分析を進めるほか、パブリシティ権に関する資料収集・分析を実施する予定である。パブリシティ権に関する議論を、著作者人格権に関する議論と比較・分析することにより、著作者人格権が保護する利益に関して議論の精緻化を図る。また、研究分担者においては、刑法における人格的利益の保護について、さらに調査・分析を進める予定であり、当該問題にかかる諸外国(特にドイツ)における議論についても調査を行い、我が国における議論と比較し、その特性等について分析を進める予定である。 両者の研究の進捗状況については、適宜、意見交換を実施し、得られた知見について情報共有を図るとともに、それにより生じうる問題意識等についても共有し、円滑な共同研究が実施できるよう工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文予定の書籍の発行が遅れたこと、及び、新型コロナウィルスにより出張が取りやめとなったため。予定された書籍は次年度に購入を予定しており、資料収集等については、新型コロナウィルスの状況に配慮して、適切な方法で実施する予定である。
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