研究課題/領域番号 |
19K01416
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
島田 明夫 東北大学, 法学研究科, 教授 (50524691)
|
研究分担者 |
姥浦 道生 東北大学, 工学研究科, 教授 (20378269)
伏見 岳人 東北大学, 法学研究科, 教授 (20610661)
丸谷 浩明 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (40419453)
板垣 勝彦 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50451761)
仙台 光仁 東北大学, 法学研究科, 教授 (90838484)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 人口減少社会 / 空き地空き家問題 / ランドバンク / 空家特措法 / 小規模連鎖型区画再編事業 / エリアマネジメント推進協議会 / 災害危険区域制度 / 火災保険の水災補償 |
研究実績の概要 |
令和2年度においては、東北大学公共政策大学院ワークショップ・プロジェクトAの主担当教員として、「人口減少社会に対応したまちづくり法制に関する研究Ⅱ」と題して、M1no院生8名との共同研究を行った。本研究においては、東北地方整備局、岩手県花巻市、紫波町、宮城県石巻市、女川町、丸森町、山形県上山市、鶴岡市に現地ヒアリング調査を行った上で、人口減少社会に対応したまちづくりの課題を整理して、「法制」、「エリアマネジメント」及び「防災」の3つの政策分野に分けて具体的な政策提言を行った。主な政策提言は以下の通りである。 (1)法制:都市計画法規制緩和による弊害と空き地空き家問題の実態に着目し、空き家特措法の改正によるランドバンク事業者等を中心とした小規模連鎖型区画再編事業の促進及び空き地空き家対策特区の設置について提言を行った。 (2)エリアマネジメント:法制分野での提言と連動してエリアマネジメントを実施する必要性に着目し、「エリアマネジメント推進協議会」の設置、並びに、中心市街地の賑わい創出に寄与する官民連携手法、及び長期継続的なまちづくりには不可欠な人材の発掘、育成、啓発を行うための施策についての提言を行った。 (3)防災:エリア価値における安全性という一面に着目し、危険な地域への居住を抑止する災害危険区域制度を活用した居住の誘導策、および「自助」の促進と題して火災保険の水災補償の付帯促進について提言を行った。 また、この研究成果の一部を、季刊住宅土地経済2021年春季号№120特別論文「立地適正化計画によるエリア価値の変化と空家対策の推進策-東北大学公共政策大学院ワークショップにおける研究」として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響で、前期においては、現地ヒアリング調査を行うことが困難であったが、後期から現地ヒアリング調査を積極的に展開することができるようになったため、おおむね順調に進展していると思料している。 「空き家特措法の改正案」では、空き家等対策計画における重点対象地区の明文化、小規模連鎖型区画再編事業(ランドバンク事業)の制度化、ランドバンク事業者の法的位置づけ、小規模連鎖型区画再編事業推進のための土地収用、および税制の特例である。「空き地・空き家対策特区の創設」については、特区の指定、総合特区制度の地域活性化総合特区に基づいて、規制緩和や税制上の支援を実施していくこと、それから指定区域(仮称)の指定、空き家特措法よりもより柔軟に政策実施地域を定めることを可能にすることを提言することができた。 エリアマネジメントでは、中心市街地の空き地、空き家の利活用をランドバンク事業と連動して実施することによりスポンジ化、スプロール化した中心部の再生を行うことのほか、民間活力を使って空き店舗、空きビル及び公共公益施設の利活用を、リノベーション手法によって行い賑わいの創出を目指すことの意義やその方向性を示した。 防災面では激甚化、頻発化する災害への対応策として、エリア価値向上における安全性の価値に着目し、防災まちづくりの観点から提言を行った。具体的には、危険な地域への居住を抑止する災害危険区域制度を活用した居住の誘導策、および「自助」の促進における火災保険の水災補償の付帯促進について提言することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度においては、令和2年度の研究でまとめた提言について、それをヒアリング対象自治体である、岩手県花巻市、宮城県丸森町、山形県鶴岡市及び上山市並びにヒアリングができなかった青森県弘前市及びむつ市にフィードバックして、より実現性の高い具体的な政策提言にする予定である。 また、これらの研究成果を、書籍としてまとめて、東北のみならず全国の地方都市にとって、衰退から賑わい創出の一助となり、住民が住みやすく幸福感を味わえるまちづくりに貢献して参りたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、学会等がすべてWeb開催になったために、旅費及び人件費・謝金の支出が予定よりも大幅に減少したことが影響している。令和3年度においては、新型コロナの感染状況によるが、できる限り、学会への出席並びに現地視察・ヒアリング調査を行う予定である。
|
備考 |
東北地方の中小都市に対するヒアリング調査を行って、コンパクトシティの実現に当たっての従前のまちづくり法制度の限界を明らかにしたうえで、少子高齢化の中においても、そこに住む地域住民が望む、より良い居住環境の実現、歴史や伝統文化、自然環境と共生しながら、地域産業とともに生きてゆくことができる住みよいまちづくりを進めるための法制度の在り方を提言することを目的として、研究を行ったものである。
|