研究課題/領域番号 |
19K01418
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
及川 敬貴 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (90341057)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 財産権尊重条項 / 環境法 |
研究実績の概要 |
財産権尊重条項が日本の法令中に挿入されたのは、文化財保護法制定時(1950年)が最初である。その後、同条項は、1957年の自然公園法を始めとする各種の環境法(自然公園法や自然環境保全法、それに絶滅のおそれのある野生動植物種の保存に関する法(種の保存法))へと伝播していった。2021年度は、2020年度から行ってきた、この条項の「来歴と伝播の過程」に係る文献調査やオンラインインタビューなどをさらに深め、次のようなことが明らかにした。 (1)我が国における自然公園法研究の第一人者である加藤峰夫教授へオンラインインタビューを行い、自然公園指定の際における地権者の反応等についてご教示をいただいた。それによれば、海外での国立公園指定の場合とは異なり、日本では、国立公園指定に際して地権者からの反対は意外と弱いことなどが分かった。 (2)文献調査の結果をさらに加味した内容を、アジア経済研究所内の研究会で報告し、高い評価を得た。そのおかげで、報告内容が同研究所のweb双書の一部として盛り込まれることが内定した。原稿(「財産権尊重条項の来歴を辿る―文化財保護法から自然公園法へ」)は現在、査読に付されている状況にある。 (3)さらに、(2)の内容をダイジェスト版にしたものを『自然らしさを手なずける―人新世のエコロジー(仮)』(日本評論社、2022年公刊予定)の一部として発表できる可能性が高まった。仮に発表ができれば、広く社会へ情報が発信できることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
史的考察に限れば、本研究は「おおむね順調に進展している」といえる。しかし、新型ウィルス問題が終息せず、2021年度に予定していたニュージーランド等への現地調査がすべて行えなくなってしまった。そのため、「やや遅れている」との評価に至ったものである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、①現在査読に付されている原稿があるので、それが戻ってきた後にはその対応を行う。その際には、さらに文献調査を行い、査読をパスできるように努めたい。②また、上述したように、①の原稿のダイジェスト版も上記の『自然らしさを手なずける』の中の一つの章として交換できる可能性が出てきた。そのため、その執筆作業に尽力したい。おそらく、それが公表できれば、社会への情報発信という意味では、①の査読現行よりも効果が絶大となるだろうからである。③この条項の「効果」の実態に迫る。具体的には、ヒアリング調査を行うことになるが、オンラインでのヒアリングの可能性を探ってみたい。環境省の実務家とコネクションがあるので、現場に詳しい担当官を紹介していただこうと考えているところである。④海外でのヒアリング調査も可能であれば行う予定であるが、新型ウィルス問題がどうなるかによるので、無用なリスクを高めることのないよう適切に対応したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 新型ウィルス問題の勃発により、予定していたヒアリング調査等がすべて中止となったため。
使用計画: 前記のような査読原稿対応やダイジェスト版公刊の可能性があるので、関連書籍や歴史資料等を積極的に購入する。また、オンラインでのヒアリング調査に必要な関連電子機器類(ノートパソコンを含む)も整備する。さらに、本年度後半に新型ウィルス問題の状況が落ち着いてきた場合には、対面でのヒアリング調査のために旅費を使用する予定である。
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