研究課題/領域番号 |
19K01419
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
稲葉 実香 金沢大学, 法学系, 准教授 (00402941)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生命倫理 / 生殖補助医療 / 親子関係 / リプロダクティヴ・ライツ |
研究実績の概要 |
令和2年度はコロナ禍のため、フランス調査が実施できず、またフランスにおける生命倫理法の立法作業にも遅れが出ているため、研究計画の大幅な変更、すなわち研究対象をフランスのみならず日本に広げるという変更を余儀なくされた。 まず、Mare & Martin社から2020年12月に出版予定であった"Les transformations du Droit public, Melanges en l’honneur du Professeur Ken Hasegawa"に収録するため、“Le "Droit" a l’interruption volontaire de grossesse au Japon - etude comparatif avec France”を執筆し、2020年8月には出版社に提出済みであるが、現在に至るまで音沙汰がなく、コロナ禍のロックダウン等により出版が遅れているものと思われる。本稿は昨年発表した「人工妊娠中絶法制の日仏比較」をフランス人向けにリライトしたものであり、発表されればフランス人による論評と日仏間での議論が期待でき、日本での法制化の参考としてフランスの法制化を調べるという研究計画に資するものである。 次に、日本においても急に生殖補助医療法制化の動きが進むとともに、興味深い判決が出されたので、フランスでの法制化の議論と比較する意味で、日本の新たな判例と法制化の動きを分析する論評「生殖補助医療と親子関係」を執筆し、(一)はすでに公表済みであり、(二)および新たな論文において、フランスに比しての日本での議論の不十分さが解明される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では、令和2年度にフランス調査に赴き、生命倫理諮問委員会(CCNE)でこれまでの生命倫理法改正時の国民会議(Etats-generaux)について、および国民会議の議論をどのように法改正に反映させていったのか、採用されなかった意見はどうなったのかなどについて、聞き取りを行う予定であった。この聞き取りが本研究の根幹であったところ、コロナ禍により渡仏できなくなり、またフランスでの新たな立法作業も大幅な遅れが出ており、予定通りのフランスの立法過程の研究は中断・遅延せざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後もしばらく渡仏が難しい状況が続くと思われ、「フランスの生命倫理法制化」についての研究としては、今後数年にわたり大幅な遅れが生じると思われる。そのため、折よく日本で生殖補助医療についての法律が成立したので、日本の法制化過程についても研究し、法制化の日仏比較という形で研究を進めていく予定である。 フランスについても、主にWeb上で入手できる議会資料などにより文献調査を進めつつ、渡仏できるようになった折には現地調査の上ですぐに論文としてまとめられるよう、準備をすすめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
フランス調査を行う予定であったが、コロナ禍で渡仏できなかったため、旅費が大幅に余った。また、現地で探して購入予定であった書籍代や資料のコピー代等も、使えないこととなった。 国内において研究会や学会への出席のために計上していた旅費についても、ほとんどがウェビナーによる開催となったので、不要となった。 今年度は昨年に調査できなかった分も合わせてフランスでの調査を行うつもりで計上しているが、コロナの状況次第では、今年度もまた調査は延期せざるを得ない可能性も高い。
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