研究課題/領域番号 |
19K01419
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
稲葉 実香 金沢大学, 法学系, 教授 (00402941)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生命倫理 / 生殖補助医療 / リプロダクティヴ・ライツ / 旧優生保護法 / 性同一性障害 |
研究実績の概要 |
2023年度はコロナ禍も明けて本来の計画に戻ることも可能であったが、計画の最終年ということもあり、フランスの調査を再開してもまとめるところまでたどり着けないことは明白であった。そこで、フランスの生命倫理の立法過程の調査は新たな研究計画として練り直すこととし、コロナ禍においてこの4年間取り組んできた、日本の生命倫理についての立法や判例の動きを調査していたものの総仕上げの年に充てることにした。 2023年4月より日本のリプロダクティヴ・ライツの現状を多角的に分析する企画を立て、憲法学のみならず民法学、法哲学、倫理学、公衆衛生、教育学などの研究者にも参加を願って、2024年3月に「リプロダクティヴ・ヘルス/ライツの多角的検討」と題する公開シンポジウムを開催した。この報告内容は法律時報の特集として公刊された。 また、2024年3月にルクセンブルクで開催された第15回日仏公法セミナー(XVeme Seminaire Franco-Japonais de Droit Public)において、性同一性障害者の権利をめぐって日本の現状の報告を行い、同テーマにおけるフランス・ルクセンブルクの報告者の報告や質疑応答、情報交換において有益な示唆を得た。 このほかにも、旧優生保護法下の強制不妊訴訟や、性同一性障害者の親子関係をめぐる訴訟の評釈を執筆し、リプロダクティヴ・ライツの検討における課題を新たに発見することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のために渡仏が難しかった期間があったため、「フランスの生命倫理法の立法過程の調査」という当初の研究計画は根本から変更する形とはなったが、生命倫理に深く関係する日本の判例や立法の動きを丹念に追い、総仕上げ的に他の分野の研究者とこのテーマについてのシンポジウムを行って意見交換を行うことができた。また、欧州の研究者とも意見交換ができたため、個人の研究としては大いにはかどったといえ、研究計画としては順調に推移している。 当初の研究計画については、新たに練り直して申請する予定である。その際には、この研究活動の下で培った人脈を用い、そこで行った意見交換等を基礎とすることができるため、より充実した研究ができる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度末のシンポジウムで日本の判例・立法の研究は一区切りではあるが、年度末の押し詰まった時期の開催となったため、自分なりの総括がまだできていない。今年度は5年間の研究をまとめるため、研究期間を1年延長して、日本の生命倫理をめぐる現状について論文を執筆する予定である。また、この間の研究に着目して、フランスの比較医事法講演シリーズからも報告を依頼され、フランス向けに日本の現状の紹介を行うこととなっている。 今後、別課題として、当初予定していたフランスの生命倫理の法制化について、国民会議(Etat generaux de la bioethique)や市民会議(Convention)の役割に着目して、日本の法制化の際の参考にできる研究計画を応募する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で渡仏できなかった間の海外渡航費の繰越しが生じている。コロナ禍で渡仏調査ができなかったため、研究計画を大幅に変更することになった。年度末に大きなシンポジウムを開催したが、その最後のまとめをする時間的余裕がなかったため、1年延長してそれを行う予定である。
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