最終年度においても、多数の研究成果を公表することができた。特許法と薬事法の交錯であるパテントリンケージの法的救済に係る研究、特許権の侵害の立証に関する規定についての研究、知的財産権侵害の損害賠償請求に係る研究、生成AIと著作権の関係に係る研究が主なものである。 本研究は、①医薬イノベーションにおける特許法の役割と医薬品規制との協働、②著作権の新たな権利制限規定、法定許諾、裁定、集中許諾制度についての研究、③特許要件、特許の保護範囲、特許権の制限についての研究、④ソーシャルネットワーキングサービスの知的財産権保護の研究を柱とし、それぞれのテーマにおいて、知的財産法の役割を相対化し、他の法制度及び市場との役割分担の在り方を探求するものである。研究期間中に公表した各論文等において、その様を具体的に描き出し、かつ、各法制度の発展の方向性に、一定の視点を与えることができたと考えている。 ①に関しては、特許法と薬事法の協働についての総論的な研究のほか、パテントリンケージ制度の抱える課題について、分析を加えることができた。②については、著作権とAIの関係を中心に、市場におけるルール形成と著作権権利制限規定の解釈との共同の様を分析することができた。③については、特許要件としての新規性・進歩性を中心に、パブリックドメインの保護とイノベーションの促進を調和するために、特許法が果たすべき役割について描き出すことができた。④については、主に、知的財産権侵害の損害賠償に係る研究成果を通じて、ネットワーク時代の知的財産保護の在り方に分析を加えることができた。
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