デジタルコンテンツ流通に関しては、①著作権証明や取引履歴の追跡が難しいこと、②海賊版問題が深刻であること、③コンテンツ利用の権利処理が煩雑であること、④使用料徴収や対価還元が複雑で不透明という問題があり、これらはブロックチェーン技術により解決できる可能性がある。ただ、新技術であるだけに、活用の際にどのような法的課題があるか、それら課題にどのように対応すべきかはまだ明らかでなく、それについて検討している知的財産法の観点からの学術研究は存在しない状況であった。 本研究は、i)権利証明、ii)海賊版検知、iii)ライセンスの前提となる権利情報DBの構築、iv)コンテンツ利用許諾と使用料の徴収・配分という4つの場面を想定し、諸外国におけるブロックチェーン技術のコンテンツ分野における活用状況および法的課題や立法状況を横断的に検討することで、日本のコンテンツ流通の円滑化に一定の示唆を提供しようとするものである。 新型コロナウィルス感染症の影響による世界的な渡航禁止により、予定していた複数の海外研究調査を実施することができず、文献調査やオンライン学会参加を通じて研究を遂行したものの、研究に遅れが生じた(研究期間を1年延長)。 2019年度のシンガポールおよび米国調査、2020年度のオンライン学会参加、2021年度のエストニアおよびフィンランド研究調査、オンライン学会参加、2022年度の韓国および豪州調査、オンライン学会参加を通じて、ブロックチェーン技術自体の進歩だけでなく、諸外国における関連アプリケーションやユースケースの発展、政策の動向も追うことができ、そこからコンテンツ流通におけるブロックチェーン技術活用のための法的課題に関する示唆を得ることができた。 これら現地調査やオンライン学会やから得た示唆に、文献調査内容を合わせた成果は、論文や研究会発表を通じて公表した(後述)。
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