研究課題/領域番号 |
19K01428
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
佐藤 恵太 中央大学, 法務研究科, 教授 (60205911)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 美術の著作物 / 書道 / 版画 / 実演家の権利 |
研究実績の概要 |
本年度は、「実演家の権利」のデジタル対応(モーションキャプチャデータの取り扱いなど)と、書道作品の著作権に重点を置き、研究を進めた。 1)実演家の権利については、従前検討対象としてこなかったが、国際著作権法学会のシンポジウムにおいて佐藤がパネルディスカッションを企画する機会を得たので、モーションキャプチャデータの保護適格を中心問題として意識しつつ、実演に何を含むかという点の分析を行った。実演家の権利の対象である実演は、著作権法上、著作物を演ずることだけでなく、これに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む、と規定されていて(著作権法2条1項3号)、芸能的性質にモーションキャプチャデータを得るためのアスリート等の動きのデータは含まれるのかを話題とした。モーションキャプチャデータは、すでに取引対象とされている現実を考えると、佐藤は積極に解する立場だが、学会では種々の反対があり、論点を煮詰めることができた。成果は、国際著作権法研究誌に掲載した。 2)書道作品については、昨年の版画に引き続き、従来は詳細を論じられてこなかった美術作品のカテゴリーごとの著作物性認定方法に光をあて、詳細を分析した。「臨書」と呼ばれる先人の書を書き写す作業が書道ではひろくおこなわれており、臨書によって描かれた作品の展示会も多くおこなわれているが、模倣による作品なので、著作物性を否定すべきであると論じた。結果、描かれた毛筆文字をキャプションして、デジタル化することが自由に行われるケースが増える解釈論を提示できたと思っている。成果は、IPIRA(国際学会であるアジア知財法研究者ネットワーク)における個別報告、およびALAIJapan研究会における共同報告である。 3)なお、デジタルアートについては、引き続き分析を進めているが、パネルディスカッションを組むまでに素材を集めるに至っていない。、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AIに関する技術進展と世論の盛り上がりがあまりに急速で、パネルディスカッションの素材を集めるのに困難を生じたため。特に2024年6月をめどにEUがAIに関する新法制(著作権の扱いを含む)を決定するという報道があったので、それを素材に含めたいと考え、今期は素材収集を優先することとした。
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今後の研究の推進方策 |
デジタルアートを中心に、素材収集をさらに集中して進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外への意見聴取等目的の出張をとりやめた(アポイント取得が難しかった)こともあり、多くの海外出張を2024年度にスライドさせる必要が生じたため。2024年中に国際学会における討論参加等を予定している(残額は、主として旅費として用いることとなる予定)。
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