研究課題/領域番号 |
19K01430
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
河井 理穂子 東洋大学, 情報連携学部, 准教授 (10468548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 個人情報 / プライバシー / 子ども / EdTech |
研究実績の概要 |
2019年度は、EdTechに関連した日米EUの子どもの個人情報・プライバシー保護のための法制度の文献調査を行った。 米国については、オンラインにおける子どもの個人情報収集等に関するCOPPA、教育機関に対して、教育情報の公開、アクセス、保持等について守るべきルールを規定しているFERPAの両連邦法に関して調査を行い、現状の課題等を明らかにした。州法に関しての調査は、全ての州への網羅的なものは行えなかったものの、代表的なカリフォルニア州などの調査を行った。また、EUはGDPRにおいて、子どもが16歳未満の場合は保護者による同意を得られた場合のみ個人情報の取り扱いが適法とされているが、およそ半数のEU諸国が各国法でその年齢を13歳から14歳に引き下げていることが明らかになった。さらに日本では、個人情報保護法のいわゆる3年ごとの見直しに関して、個人情報保護委員会が制度改正大綱を2019年12月に公表し、閣議決定が2020年3月10日になされた。利用停止・消去等の個人の請求権は、現行法でも一部の法違反の場合に認められているが本改正で、その範囲が個人の権利又は正当な利益が害される恐れがある場合にも一定程度広げられた。子どもが未来において、自己の個人情報に関して事後的に利用停止ができるという可能性は生まれたものの、子どもに関する直接的な規定は依然存在しない。 文献調査の中で、保護者が何らかの理由によってすぐに同意を行えない場合、何らかの理由で保護者と子どもの利益が相反する場合、18歳未満であってもEdTechを介した教育などを自己の判断で利用する必要性が生じる場合などは、保護者の同意のみを子どもの個人情報・プライバシー情報の収集・利用の条件とすると様々な問題が生じることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2019年度中に上記の内容以外に、日米EUの教育現場においてEdTechがどのように利用され、どのような個人情報がどのようにどのようなタイミングで収集されているのかについて文献調査を行って定量的に分析をすること、さらに日本に関しては、文献調査の結果を参考にしながら、EdTechを活用した教育を行う教育機関に対して、現地調査とインタビュー調査を行い、定性的に分析をする予定であった。文献調査については一部は実施済であるが、まだ調査の途中である。また、国内の現地調査、インタビュー調査については、令和2年3月に予定をしていたが、COVID-19の影響により、実施することができない状態であった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度からの積み残しである日本国内の教育機関への現地調査、インタビュー調査に加え、2020年度は、米国の法執行状況の分析、法執行機関・教育機関へのインタビュー調査と分析を予定している。しかし、COVID-19の影響で、2020年度中の国内出張、ましてや海外への調査出張は困難となる可能性がある。できる限り、テレビ会議等での調査を先行して行い、研究に遅れがでないように配慮する必要がある。 また、COVID-19の影響で、現在EdTechを利用したオンライン教育が半ば強制的に全世界において実施され始めている。本研究では、今まで先進的な事例等を主に対象にしていたが、今後は一般的な学校教育でEdTechを利用したことでどのような個人情報に関する課題が生じているかにまで、研究の範囲を広げることができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、主に2つある。まずは、COVID-19の影響及び家庭の事情により、国内の現地調査が実施できなかったことである。さらに、2019年度に計上をした人件費に関しては、調査結果の分析に使用する予定であった。次年度において、海外における調査と並行して国内調査も行う。
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