研究課題/領域番号 |
19K01430
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
河井 理穂子 東洋大学, 情報連携学部, 准教授 (10468548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 個人情報 / プライバシー / 子ども / EdTech / 日米欧 |
研究実績の概要 |
2020年度、日本ではコロナ禍の影響を受けて、GIGAスクール構想がハイスピードで進められ、各学校へのタブレットPCなどの学習端末の配布、学校内への高速ネットワークの配置などが前倒しで行われた。児童・生徒が一人一台端末を持ち、ネットワークに繋げ、ICTを活用することで、一斉学習、個別学習、協働学習を変えると言うものである。本研究では、どのようなデータが一人一台の端末からどのようなタイミングで取得され、どのように利用される(予定である)のか、実際に実践が始まったGIGAスクール構想でのそれぞれの学習形態の代表的なモデルをもとに整理をした。そして、保護者がどのような子どものデータについてどのような利用のタイミングで、どのような利用についての同意を得なければならないのか検討した。 米国では、学校においてクラウドを利用した教育を行う場合、一定の条件において、子どものデータをクラウド上に置くことを、学校が保護者の代わりに代理で同意をすることが可能であるとされており(子どもの個人情報保護に関する監督機関の一つであるFTC(Federal Trade Commission)は、情報が内部で利用され、行動広告など営利目的で利用されない場合に限り、学校の代理同意が可能としている)、学校での個人データの利用について保護者の同意が必要ない場合も少なからず存在する。米国には、Federal Educational Rights and Privacy Act of 1974(FERPA)という、成績などの学校における子どものデータの権利を規定する連邦法があり、日本でのそのような法律の必要性についても検討した。さらに、米国におけるCOPPAの法執行を分析し、執行事例のほとんどが子どものデータの同意なしの取得と第三者へ不正にデータを渡したというものであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、当初の予定では、米国の法執行機関、教育機関を訪ね、現地調査とインタビュー調査を行う予定であった。しかし、COVID-19の影響により、渡米はできず、各教育機関においてもインタビュー調査などを受ける余裕がなかった。よって、法執行機関や教育機関が公表している情報の収集のみに終わっている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、国内の各教育機関がCOVID-19の影響でインタビュー調査を受ける余裕などがなかったので、今年度はインタビュー調査を行う。また、2020年度に児童・生徒へ一人一台の端末の配布が進み、保護者も子どもたちが実際どのように情報端末を使用し、どのようなことがGIGAスクール構想で行われ始めているのか、想像がつきやすくなったため、教育機関へのインタビュー調査に加えて、保護者へのアンケート調査、インタビュー調査も実施する予定である。米国、EUについては、現地調査、訪問してのインタビュー調査については不可能なことが予測されるため、オンラインでの調査を行い、日本での保護者インタビューと類似のものを実施し、日米欧の保護者に対する、子どもの個人データに関するアンケート調査の比較を行うことを検討したい。そうすることにより、本研究の問いの中心である、「保護者の完全な同意を重要視することが子どもの個人情報・プライバシー保護に適しているのか」について、保護者がどの程度完全な同意をすることができるのか、また児童・生徒・保護者がその完全な同意をどこまで望んでいるのかについて、明らかにできると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最大の理由は、COVID-19の影響により、米国への出張が不可能となり、現地調査が実施できなかったことである。予算については、渡航が可能となった際、EU と米国への出張を実施するが、並行してオンラインでのインタビュー調査などを行い、コネクションを増やし、予算を使用して一定の謝金を支払うことでインタビュー先を増やすことを検討している。
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