研究課題/領域番号 |
19K01430
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
河井 理穂子 東洋大学, 情報連携学部, 准教授 (10468548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プライバシー / 子ども / 教育記録 |
研究実績の概要 |
米国やEUにおいて、子どもの個人情報・プライバシーに関わる法や規則が新規に複数成立したため、改めて日米欧の法制度の全体像、その運用と執行について検討を行った。子どもの個人に関する情報がEdTechを介して扱われる場面を(1)学校教育(学校教育法上の学校における教育、宿題などの家庭学習を含む)と(2)学校外での学習活動(子どもが個人的に利用するオンライン教育教材、SNSなど)の2つに分け、それぞれの法規制とその運用、執行状況を日米欧で整理し検討した。(1)に関しEUには、EU一般データ保護規則(GDPR)とは別に、教育記録(個人情報として扱われないものも含む)の取得・保有や保護者の閲覧・修正等に関する法規定を置く国がある。米国は、包括的な個人情報保護法は存在しないが、教育記録(EUと同様にいわゆる個人情報よりも広い範囲の教育データ)に関する取得、利用等の連邦法がある。保護者及び本人の教育記録の閲覧・修正等が認められ、また州法ではさらにそれらが細かく規定されている。日本は、個人情報に該当する教育記録に関して個人情報保護法上の保護がされているが、それ以外の教育記録に関して明確に規定がない。ただ、米欧においても教育記録に関する法の運用や執行に関しては課題も多いことが明らかとなった。(2)に関して欧米では、子どもに対するサービスの提供者は、プライバシー設定をデフォルト状態で高度なレベルにしておくこと、子どもを対象としたターゲット広告の配信は許されず、位置情報の収集もオフとすることが必須など、かなり厳しい細かな法や実施規則を採用する国や地域が増えてきている。日本は個人情報保護法の保護範囲に現在はとどまっている。2022年度は、(1)について日本における教育記録に関する法制度の検討、(2)は日本におけるサービス提供者に対するより厳しい細かな法または実施規則策定の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響で国内外のインタビュー調査、現地調査の実施が現時点ではまだ不十分であり、やや遅れていると評価する。しかし一方で、本研究が当初想定していたよりも、EdTechを利用した教育活動や学校教育外でのEdTech利用が短期間で一気に発展したため、特に欧米で新しい法の成立や検討が進められた。それらを分析することで、2022年度までに日米欧法制度の全体像、運用と執行の各国の方向性、違いなどを明らかにすることができた。そして、日本における子どもの個人情報・プライバシーの取り扱いについて、保護者の同意中心の法制度が最適であるのか、同意中心でない法制度はどのようなものが考えられるか、どのような法制度を構成すれば良いのか、素案を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題最終年度であるので、本研究の目的である、EdTechの活用において、子どもの個人情報・プライバシーの取り扱いについて、保護者の同意中心の法制度が最適であるのか、同意中心でない法制度はどのようなものが考えられるか、日本における一つの素案を提案する。その素案に関して、教育関係者や有識者へ意見を求めるインタビュー調査を行う。そして、まとめとして、保護者の同意中心の法制度が最適であるのか、同意中心でない法制度はどのようなものが考えられるか、どのような法制度を構成すれば良いのか、教育関係者や欧米の研究者とともに検討する公開研究会を開催し、広く意見を求めまとめとする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で、海外へのインタビュー調査、現地調査、最終年度の公開研究会の開催を2023年度に延期した。 次年度、これらの延期をした調査と研究会の実施に助成金を使用する予定である。
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