研究課題/領域番号 |
19K01431
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
金子 敏哉 明治大学, 法学部, 専任准教授 (20548250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 損害賠償 / 損害額 / 著作権 / 商標権 / 法定損害賠償 / 実証分析 |
研究実績の概要 |
(1)ハーバード大学の滞在中に著作権・商標関係の損害賠償額に関する商用データベースを活用する機会を得たこと、(2)本研究のテーマに関連する他のプロジェクト(商標権に関する民事刑事のエンフォースメントの日米比較研究)を並行して実施する機会を得たことから、当初の研究予定を変更し、米国の著作権に関する損害賠償をめぐる制度と運用の実情(特に2014年以降の損害額の分析)の検討、日本についても平成26年以降の著作権に関する裁判例の損害賠償の分析とデータベースの作成を重点に行った。 検討の成果として、米国の著作権に係る損害賠償制度の沿革(法定損害賠償とエクイティ上の利益返還)、米国における著作権・商標権・特許権間の損害賠償制度の異同とその背景、実際の裁判例の運用状況(特に高い欠席判決率と欠席判決における高額の法定損害賠償等)を明らかにした。また日本の裁判例については、近年の裁判例のデータベースを試験的に作成し、適用法条や推定の覆滅についての分析を行うとともに、米国との損害額についての具体的な比較を行った。またその際の国際的な損害額の比較のための手法、侵害者の売上高と損害額の関係に着目する手法を活用した。 また損害額の算定に関する論点に関する検討として、令和元年の特許法・商標法の損害賠償規定の改正(特許法102条・商標法38条新1項)の意義と解釈の検討、TPP対応のために導入された著作権法114条新4項に関する裁判例についての検討を行い、判例評釈や論考としての執筆を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英国法についての調査を十分に進めることができなかったこと(2019年度末に予定されたいた英国での調査を中止したこと)、日本の裁判例についての分析が米国法との比較を重視したため2014年から2018年を中心としたものとなった点で(当初予定は平成元年から平成15年)当初計画よりもやや遅れているものと評価される。
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今後の研究の推進方策 |
関連研究(商標権の民事・刑事のエンフォースメントに関する日米比較)の成果を統合しつつ、日本法についての裁判例の分析を重点的に進めるとともに、2020年度中に研究会で報告する等の形でその成果について第三者の視点から評価を受ける機会を設ける予定である。 なお当初計画において海外調査等を予定していた事項についてはWebを介した調査・意見交換で可能な形での資料収集等の形で対応する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年3月に予定していた海外調査等が新型コロナウイルスをめぐる状況のため実施不可能となった。この分については、2020年度の調査(又はこれにかわるデータベースや書籍その他の資料の費用)として使用する予定である。
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