研究課題/領域番号 |
19K01432
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高林 龍 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90277765)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | デザイン / 意匠法 / 応用美術 |
研究実績の概要 |
本研究は、意匠法をゼロベースで再検討し、日本におけるデザイン保護法の具体的な立法提言のとりまとめを通じ、デザインプロセスの理解に基づくデザイン保護法の理論の創出を目的とする。当初の予定では、2019年度は、比較法的見地からの分析と、デザインの現場における活動プロセス(デザインプロセス)と法的保護の関係の分析という2つのアプローチから検討を並行して行う予定であった。 比較法的見地からの分析に関して、特にいわゆる「応用美術」の論点につき検討を行った。実用品のデザインが著作物として保護され得るかという「応用美術」の論点について、日本においては<ファッションショー事件>及び<TRIPP TRAPP事件>の2つの知財高裁判決がそれぞれ異なる規範を採用したこともあり、以後の下級審裁判例は理論的混迷期にあり、学説における議論も帰一するところがない状況にある。さらに、2019年9月12日にCofemel事件判決(C-683/17)において、応用美術保護に関してのCJEUの判断が示され、大きな注目を集めている。そこで、フランスからPollaud-Dulian教授(パンテオン・ソルボンヌ大学)を招聘して、セミナー「応用美術保護の再検討―近時のCJEU判決を背景として―」(2019年11月16日、早稲田大学)を開催した。国内からも法学研究者や法律実務家を招き、Cofemel事件先決裁定を中心に、日欧の比較の視点も踏まえた検討を行った。 また、デザインの現場における活動プロセス(デザインプロセス)と法的保護の関係の分析に関して、研究代表者が副会長を務める「デザインと法協会」における活動を通じて、デザイナーやデザイン保護にかかわる法律実務家などとの意見交換を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、2019年度は、比較法的見地からの分析と、デザインプロセスと法的保護の関係の分析という2つのアプローチから検討を並行して行う予定であった。前述のとおり、Pollaud-Dulian教授を招聘してのセミナーを開催し、意見交換も行うことができ、また、デザインと法協会の活動を通じて、デザインプロセスと法的保護の関係の分析も継続中である。他方で、2020年2月ごろより、新型コロナウイルス感染症の影響があり、研究継続に大きな支障が生じた。 これらに鑑みれば、おおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も継続して、比較法的見地からの分析と、デザインプロセスと法的保護の関係の分析という2つのアプローチから検討を並行して行う予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、研究会の実施は極めて困難となることが考えられ、資料へのアクセスも大きく制約されるものと思われる。 そのため、文献調査を中心とした比較法的見地からの分析を中心として行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度においては文献調査よりも、招聘に伴う意見交換や議論による検討を優先したことから、物品費等に要する費用が、当初の計画時における見積額よりも、実際に要する費用が低く済んだため。 2020年度は、文献調査を中心とした比較法的見地からの分析を中心として行うことを予定しているため、次年度使用額は文献調査のための図書費に上乗せして充当する。
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