研究課題/領域番号 |
19K01435
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
黒坂 則子 同志社大学, 法学部, 教授 (60441193)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土地利用規制 / 土砂条例 |
研究実績の概要 |
本研究は、環境問題のなかでも、不動産をめぐる環境問題について、土地所有者が負うべき責任や地方自治体の土地利用規制権限のあり方、そして地方自治体と国との役割分担などを中心に検討するものである。 2019年度は、日米両国における土地利用規制についての包括的な文献を収集することからはじめた。両国ともに研究の緒に就いたところであるが、わが国については、その不動産関連判例のうち、完成間近のマンションの建築計画変更確認処分を取り消した裁決の適法性が争われた事例(東京地判平成30年5月24日判時2388号3頁)が注目されたので、これに関する評釈を公表した。同判決は、本研究の主眼とする建築紛争やまちづくりにおける課題を浮き彫りにした事例の一つに位置付けることができる。 また、地方自治体の土地利用規制のあり方を考えるうえで、墓地等の経営許可をめぐる紛争が注目される。これに関し、情報公開訴訟であるが、自治体の墓地経営許可に際し、被告職員が顧問弁護士に相談した法律相談の結果報告書のうち非公開とされた情報が市の情報公開条例における非公開情報に該当するかが争われた事例(さいたま地判平成30年3月28日判自441号17頁)の評釈を公表した。さらに、不動産関連判例として、固定資産評価審査委員会に審査の申出をした者が当該申出に対する同委員会の決定の取消訴訟において同委員会による審査の際に主張しなかった事由を主張することの許否が争われた事例(最三小判令和元年7月16日民集73巻3号211頁)も紹介した。なお、従来より研究の対象としてきた土砂条例に関しては、学会等で報告する機会も得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画から、日米両国における土地利用規制についての包括的な文献及び関連判例の収集からはじめることとしていた。そして、来日されたアメリカのJeffrey Lubbers教授(American University)の助力も得つつ、文献収集などをすることができた。今後、これらの文献を利用しつつ、アメリカにおいて新たな判例が出れば、その判例を中心に検討を行うこととしたい。一方、わが国においては、注目される判決が見られたことから、これを判例評釈の形で検討することとした。なお、すでに一定の研究成果を過去に公表してきた土砂条例については、これまでの研究成果をまとめ、学会報告等を行った。引き続き、研究をすすめていきたい(アメリカに関する調査がコロナ禍等の影響で難しい場合には、わが国の自治体における現状や関連裁判例の研究を先に進めていきたい)。以上のように、おおむね当初の計画通りの進捗状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当初の計画通り、本年度に収集した文献や裁判例の資料を整理し、検討を加え、日米の土地環境問題に関する本格的な研究に取り組んでいきたいと考えている。その過程で、アメリカにJeffrey Lubbers教授の助力のもと、ヒアリング調査に行きたいと考えているが、ヒアリング調査がコロナ禍等の影響で不可能な場合には、まずはわが国の現状について、具体的な裁判例などをもとに検討し、公表することとしたいと考えている。とくに、墓地に関する裁判例や、太陽光発電設備をめぐる裁判例が注目されるので、これらについて、検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、アメリカにて夏休みにヒアリング調査予定であったが、ヒアリング協力者のJeffrey Lubbers教授が4月末に来日され、5月に簡単なヒアリング調査をさせていただいたことに伴い、文献収集後の本格的なヒアリング調査を春休みに実施することに変更したところ、その後、コロナ禍のため春休みに渡米できず、旅費分などが残っている。次年度以降、渡米してヒアリング等調査の続きを行いたいと考えている。
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