ヘイトスピーチについて、欧州委員会は、16年に「欧州のためのオンライン・プラットフォーム及びデジタル単一市場の機会及び挑戦」と題する政策の方向性を示す文書を公表し、同年、大手SNS事業者に対して、ユーザの苦情申し立ての受理後、審査し、明らかに違法な情報について24時間以内に削除又はブロッキングを求める「プラットフォーム行動規範」を策定した。これにとどまらず17年にドイツは、ドイツ秩序違反法30条に基づき、違法情報の削除又はブロッキングの義務化とそのための事業者の体制整備の懈怠に対する制裁として代表者に約6億円そして法人に約60億円を上限として過料を科す立法化をした。フランスではインターネット上の憎悪表現情報への対策法が制定され、SNS事業者による「24時間以内の明らかに違法な言動の削除の拒否」を軽罪とし、視聴覚高等評議会が、事業者がコンテンツ・モデレートシステムを構築しない不作為だけでなく、個別の削除等の不作為にも罰金を科すと規定した(※本法のほとんどの規定は違憲とされた)。これらの動きの到達点としてEUのデジタル基本法としての性格をもつ「デジタル市場法」と「デジタルサービス法」が制定され、全加盟国において即時に効力を発する「規則」として施行された。後者は、特に大手プラットフォーム事業者に対して違法情報の削除等のコンテンツ・モデレーションに関する義務を定めると同時に、レコメンダ機能の透明性を求める。
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