研究課題/領域番号 |
19K01438
|
研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
松村 歌子 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (60434875)
|
研究分担者 |
井上 匡子 神奈川大学, 法学部, 教授 (10222291)
宮園 久栄 東洋学園大学, 人間科学部, 教授 (40348446)
清末 愛砂 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (00432427)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ドメスティック・バイオレンス / DV加害者 / 被害者支援 / 加害者プログラム |
研究実績の概要 |
本研究では、いわゆる応報的な懲らしめとしての刑罰を加害者に科し、社会から排除するという従来の手法だけではなく、社会を巻き込んだ形で、継続的なプログラムの受講を新しい刑罰の選択肢の一つとして模索することで、被害者支援に資する法制度の構築を検討している。どのようなアプローチがDVの再加害の防止に資するのかについて、特に法的な側面から、プログラムを支える枠組み・法制度の構築を検討してきた。実効的な加害者プログラムの実践をするために、どのような法制度を構築することが望ましいのか、暴力をふるった加害者が、加害者プログラム等を受け、自らの暴力の言動を認識し、暴力の責任を負い、相手を尊重していくことができれば、暴力のリスクを減らしながら、同居し続けるという選択を被害者が取ることもできるだろう。被害者支援の一環として加害者へ働きかけること、加害者プログラムや暴力全体のリスクアセスメント、暴力について詳しく知ることは、支援者や被害者の身の安全を図ることができるだけでなく、被害者の生き方の選択肢をより広げ、被害者支援の質と幅を広げることにつながる。 日本のDV施策では加害者へのアプローチを欠いており、民間団体の一部において、DV被害者支援の一環として加害者更生プログラムを実施しているところもあるが、任意参加にとどまる現状では、その実効性及び効果が不十分となることが指摘されている。 2021年度は、女性学会、日本哲学会、亜細亜女性法学会、司法福祉学会などで、これまでの研究成果を報告した。また、内閣府のDV相談プラス事業や民間支援団体の調査研究事業の関連で、DV相談プラスへの相談内容の定性分析や民間支援団体の抱える課題や新規事業のヒアリングなどを行ったほか、離婚後面会交流を実施している母親への個別ヒアリングなどを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度は、司法福祉学会、亜細亜女性法学会、世界シェルター会議、ジェンダー法学会において、DV被害者支援のためのソーシャルワーク機能の再検討や、シェルターの重要性、住まいの観点からの保護命令の再検討などについて報告することができたが、2020年2月後半以降、感染症拡大防止の観点から、訪問先も調整済みであったオーストラリアでの調査も延期となった。2020年度はその他の研究会、学会、調査の予定等が軒並みキャンセルとなり、国内でも移動制限があったことから、調査や対面での研究活動に関しては軒並み停滞したと言わざるを得ない。 しかし、2021年度は、国内においても移動制限があるなど、同様の制約はあったものの、オンライン化が進んだことにより、学会や研究会報告も小さい規模ではあるものの実施が可能となり、女性学会、日本哲学会、亜細亜女性法学会、司法福祉学会での報告の機会を得られた。 この3年間での研究活動だけでは十分ではなかったため、1年間の期間延長をし、2022年度は、DVの再加害防止に向けた法制度の比較検討及び構築を目的として、諸外国の法実践を参考に、日本においてどのような形で加害者に働きかける法制度を構築するのが有効か、加害者プログラムの実施に必要な法制度の構築について、ジェンダーの視点を入れつつ検討を行なっていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、徐々に行動制限が解除され、学会や研究会、シンポジウムなどは、オンラインと対面のハイブリッド型や対面で実施できるようになってきた。今後も、オンラインでの研究活動に加えて、ヒアリング調査や研究会の実施、国内外の調査などを実施し、研究を進めていく予定である。 コロナ禍の前に訪問予定であったカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州の加害者プログラムやオーストラリアのメルボルンとシドニーにDV関連の団体を訪問したい。訪問時期は、9月や2-3月頃の長期休暇の時期が考えられるが、海外調査が可能どうかは、いまだ不透明な状態にあるため、韓国・台湾・シンガポールなどアジアの近隣地域への訪問に切り替えることも視野に入れている。 海外調査が実施困難な場合は、国内の加害者プログラム実施団体や被害者支援団体への聞き取り調査や、関連する学会やシンポジウム・研究会に参加・報告し、情報収集及び関連する研究者や支援者との交流を深め、意見交換を行なう等をして研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月以降、世界的なパンデミックにより、国内外の移動制限がかかり、思うように研究活動を進めることが困難となった。2021年度以降は、学会や研究会活動などについては、オンラインで実施する形が定着し、少し活発に活動ができるようになってきたものの、国内外の加害者プログラムや被害者支援の実施団体に訪問しての現地調査を行うことは難しい状況が続いている。そのため、3年間の予定であった本研究計画を1年間延長し、2022年度も引き続き研究を継続することとした。2022年度は国内外の動向を注視しつつ、研究活動を行っていく。
|