研究課題/領域番号 |
19K01440
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
三田 妃路佳 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (80454346)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 政権交代 / 中央・地方関係 / 予算配分 / 補助金 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスのため、調査のなかで遂行できなかったものもあるが、第一の成果として、これまでの国土交通省へのヒアリングや提供資料、官民関係の文献をもとに、地域公共交通の整備・運営をめぐる官民関係を整理し、編著者を務めた『対立軸でみる公共政策入門』の第5章に執筆したことである。 第二に、国会の議事録や国土交通省へのヒアリングによって、政権交代が地域公共交通政策に影響与えるという知見をえたことである。具体的には、民主党政権時代に交通基本法が提案され、廃案となったが後の交通政策基本法の基礎となったこと、地域公共交通確保維持改善事業が作られ、自公政権ではバラバラであった地域公共交通関連の補助金が一部統合されたことである。詳細な情報を得るため民主党で国土交通省を担当した議員にヒアリングを行うことが決まっていたが、新型コロナウイルスの影響により延期となり、現在まで行われていない。 第三に、富山市や国土交通省へのヒアリング、米国に関する文献により、財政支援については自治体への国の影響、ライドシェアについては市町村を中心とした運営になっているという、日本の地域公共交通の特徴が明確になったことである。例えば、日本の地域公共交通への国からの財政支援を得るには、コンパクトシティの推進を進めている地域であるかどうかが重要となる。連邦公共交通補助制度の運用について、地域公共交通が発展している米国ポートランドへの調査を計画していたが、新型コロナの感染を避けるため控えることとした。 第四に、日本行政学会で、日本における公共事業や公共交通の政策が変化する要因についての報告の機会を得たことである。しかし、新型コロナにより、上記のようにヒアリング調査などによる裏付けが十分に取れておらず、報告延期は可能との企画者の方から支援の言葉もあったためキャンセルし、来年優先的に報告させてもらうこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本計画の問題意識「なぜ日本の道路政策は自動車中心であり、公共交通への財源が十分に配分されてこなかったのか、地域の足を確保するために、ライドシェアなどへの規制緩和が進まないのか」を明らかにするために、2つの要素、地域公共交通への国の財政的支援制度、ライドシェアの状況について日本の他、米国で調査することを予定した。 まず、ライドシェアについてであるが、日本については、国土交通省へのヒアリングや文献を通じて、自家用有償旅客運送の運用の規制緩和が自治体や非営利法人を運営主体とする形で進んでいることを明らかにした。2016年には過疎地域で、輸送や福祉輸送といった地域住民の生活維持には必要とされる輸送であり、バス、タクシー事業による提供が困難な場合には、市町村や NPO 等が自家用自動車を使用して 有償で運送できるようになっている。また、国家戦略特区では、訪日外国人をはじめとする観光客を対象に、市町村、非営利団体を運営主体として、自家用自動車の活用拡大している。加えて、2019年の「成長戦略実行計画」では、society5.0にむけて、交通事業者(タクシー事業者等)が市町村等から委託を受け、ノウハウを活用して、運行管理や車両整備の側面で自家用有償旅客運送に協力する制度が、2020年の法案により制定されることとなった。 これらの共通点は、あくまでも市町村やNPOが運営の主体であるということである。例えば、Uberやnottecoといった民間の企業が運営するなかで、いわゆるプロの運転手以外の一般住民が運転することは想定されていない。 海外調査については、大学入試の業務が終わる3月以降に出張し、まず米国で地域公共交通に関する国の財政的支援の使途への自治体による決定の自由度、民間が運営するライドシェアに対する意識について調査する予定でいたが、新型コロナウイルスの影響で全て取りやめた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も新型コロナウィルスの影響で現地調査は難しいと思われるが、メール等で可能な限りヒアイングを実施する。 地域公共交通へ制度制定過程に関わる政党・政権交代の影響のほか、自治体が地域公共交通に関する国からの補助金を使用する際の課題を研究する。また、自治体における道路事業と公共交通や自転車事業への予算配分、地域公共交通の利用における住民と事業者との関係などについて調査する。2019年度に引き続き理論的側面の強化を新制度論の文献などから行う。 日本については、まず、公共交通を重視する方向への政策転換の契機となったが、移動権の記載を断念した交通基本法案の制定過程を調査する。具体的には、当時の民主党政権の関係者へのヒアリング等を通じて「交通基本法案の立案における基本的な論点について」に至る過程で生じた、意見対立、同法案に関係する業界の反応を明確にする。また、2019年度の調査で、地域公共交通確保維持改善事業は民主党政権下で設置されたことが分かったため、同事業が制定された経緯についてさらに調査を行う。加えて、国からの資金を得て、多様な輸送サービス提供が可能になった自治体に調査を行う。公的資金を得ることの利点・課題、地域公共交通網形成計画に基づくコンパクトシティを進める課題、地域住民、交通事業者等の関係を明確にする。 次に、ライドシェアについては、国家戦略特区や地域公共交通の活性化及び再生に関する法律での公的支援を受けた自治体への調査を行う。 海外調査については、地域公共交通に対する公的支援が行われている背景、公的資金の使途の自由度、ライドシェアでの利用者と民間事業者などの関係、自動車以外の移動手段として、バス・タクシーの他、自転車政策への取組みなどを調査したい。しかし、おそらく2020年も調査には行けないと想定される。メールで連絡し、zoom等のよるヒアリングが可能か模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に海外調査を実施する予定でいたが、新型コロナウィルスのため、取りやめた。そのため、渡航費や場合によっては通訳費として予定していた予算を使用できなかった。仮に2020年度海外調査が出来るようになった場合、この分を使用したい。
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