研究実績の概要 |
フランスのコミューン(市町村)は、合併が進まないまま、その数は36,500前後で長らく推移してきたが、2016-17年における合併件数の急増により、現在は35,000弱まで減少している。本研究は、その背景にある2010年の新しい市町村合併制度について検討するとともに、合併後に出現する広域行政空間において、住民合議のための都市内分権組織である「住区評議会」(人口8万人以上のコミューンでは設置が法的義務)がどのように機能しているのか、合併により人口が8万人を突破した新コミューンでの現地調査を通じて、明らかにしていこうとするものである。 研究計画の1年目にあたる2019年度は、上述の市町村合併制度について、その内容を整理するとともに、市町村合併により人口が8万人を突破したフランス北西部ノルマンディ地方の地方都市シェルブール=アン=コタンタンの市役所を訪問し、聞き取り調査を実施した。2020-21年度については、コロナ禍の影響で現地調査は実現しなかったが、本研究の研究期間を1年延長し、2022年の9月にはフランス南東部の地方都市アヌシーの市役所で聞き取り調査を実施した。 アヌシー市は、2017年1月に市町村合併したことで、人口が8万人を突破したため、同年12月に同市は住区評議会を設置したが、その後、2020年春の全国一斉コミューン議会選挙において、同市では市政担当者の交代(中道右派から環境保護派へ)が起こり、この新市政は、選挙公約に従い、「市民参加改革」を実行に移すとともに、前市政下で設置された住区評議会についても、抜本的な見直しをおこなった。同市では、市が設置した暫定住区評議会(240名の一般市民)で審議がおこなわれ、住区の数や地理的区画の再定義をおこない、その成果は「住区評議会憲章」(2022年4月)として成文化されている。
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