研究課題/領域番号 |
19K01457
|
研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
中田 瑞穂 明治学院大学, 国際学部, 教授 (70386506)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 選挙プロフェッショナル政党 / 東中欧 / 政党類型 / 選挙マーケティング |
研究実績の概要 |
今年度は、選挙プロフェッショナル政党の進出がもたらす政党システムの変容とその民主主義に与える影響について、チェコをケーススタディーとする実証研究を、学会誌『年報政治学』に発表することができた。その過程で、チェコの政党ANOに注目した。ANOは、イデオロギー的なポジションをとらず、ヴェイレンス・イシューによるアピールで支持を集めた。政党組織としては、企業家バビシュが党の設立、意思決定に大きな役割を果たし、有権者とのコミュニケーションは、外部の専門家を利用した政治的マーケティングによって実施されている。地方支部も備えた党機構は、中央集権的でトップダウンに運営され、企業的な人事の手法も採用されている。本研究によって、既存政党にもみられる選挙プロフェッショナル政党化の傾向と、このようなビジネス企業政党の相違点が明らかになった。この新党は政党創設者の私的な目的と結びついている点で既存政党と異なる。また、ANOの成功は、ポジショナルな政党間競合を弱め、市民の政策の消費者としての側面を強化し、政党政治の変化をもたらしていることを明らかにした。 このチェコの実証研究と並行して進めたのが、ポピュリズムの歴史的背景についての一連の研究である。選挙プロフェッショナル政党が、政治的な対立軸とどのような関係を用いるのかについて、左右軸上の既存政党を批判する新党として現れるポピュリスト政党に着目して文献をベースとする予備的分析をおこなった。同様に政党間の経済的文化的対立軸とは一線を画した形で政党システムに参画しているクライアントリズム政党についても 分析を行い、選挙プロフェッショナル政党との類似点と相違点を探った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
もともと自分の研究のベースとしているチェコに関しては、実証的な研究を学会誌に論文として発表することができた。理論的な枠組み形成については、ほぼ予定通り進んでいる。 しかし、新型コロナウイルスの影響により、国外での資料収集や現地調査を行うことができなかった。チェコ以外のポーランド、スロバキアやハンガリー、スロベニアについての現地調査をすることが難しい状態が続いている。文献やインターネット上での情報収集に努めたが、限界もあった。一方で、研究開始当初には想定していなかった、ポピュリズム研究や、クライアンテリズム政党との関係を探るという、新しい方向性の研究を進めることができたのは収穫であった。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症に関する渡航制限が解除された場合、ポーランドとハンガリーを中心に政党資料収集を実施する計画である。現地出張によって、政党当局者、政党研究者、政党のマーケティング戦略研究者へのインタビューを試みることを計画している。本年度が最終年度であるが、現地調査が遅れているため、本研究課題の研究期間を延長することも考慮に入れている。先行研究のアップデイトのための新刊書の購入を行う予定である。 理論面についての分析もさらに進める計画であり、昨年度から開始した選挙プロフェッショナル制度とポピュリズムとの関係について、歴史的な視点を含めた、理論的な論文の執筆を予定している。これに関しては比較政治学会の年次大会で報告を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の分も含め海外調査をしようと考えていたが、2021年度も引き続き新型コロナ感染症の影響で、出張ができなかった。2022年度に状況が改選すれば、出張して現地調査を行う予定である。
|