研究課題/領域番号 |
19K01457
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
中田 瑞穂 明治学院大学, 国際学部, 教授 (70386506)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 選挙プロフェッショナル政党 / 東中欧 / 政党類型 / 選挙マーケティング / ポピュリズム / 法の支配 |
研究実績の概要 |
2022年度は、学科主任となり、過剰な学務を負わされ、十分な実績を上げることができず、研究期間の延長を申請させていただいた。その中で、発表できたのは、法の支配に関する論文であり(「東中欧諸国における「法の支配」-EUの法の支配概念との対立をめぐって」『立教法学』106号)、本科研プロジェクトが対象としている新しいタイプの選挙プロフェッショナル政党が政党システム全体をカバーするようになっているポーランドについて、そのような政党政治が法の支配に与える影響を考察したものである。また、選挙プロフェッショナル政党の進出がもたらす政党システムの変容とその民主主義に与える影響について、チェコをケーススタディーとする論稿も発表した。 一方で、2022年度は、理論面についての分析を進め、選挙プロフェッショナル政党について、歴史的な視点を含めた考察を行い、比較政治学会の年次大会で報告した。その中で、1970年代、80年代には選挙プロフェッショナル政党化が始まったといわれているが、当時の研究をみると争点の点ではイデオロギー左右軸の拘束が目立つこと、政党組織構造の点でも従来の延長線上の視点が強いことを明らかにした。これに関しては、共同出版計画が進行中であり、2022年度中研究会を重ねた。2023年度中には出版を実現する予定である。 これと並行して進めたのが選挙プロフェッショナル政党とポピュリズムの関連についての研究である。ポピュリズムというと、移民排斥や欧州統合への懐疑などの具体的争点が着目されることが多いが、東中欧諸国では選挙プロフェッショナル政党といわれる政党とポピュリズム政党が重なっていることが多い。そこで、ラテンアメリカ研究者を含むポピュリズム政党の研究者とも研究会を実施し、意見交換を行った。それに基づき論文を執筆中であり、こちらも共同出版の計画を立てている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
国外での資料収集や現地調査を行うことができなかった。新型コロナウイルスによる規制が緩和され、国外での調査が徐々に可能になったが、大学内で学科主任を務めていたため、学期以外の時期も入試、オープンキャンパス等の関係で日程を取ることが難しく、また、数日あけられても、そのあとすぐ欠席が不可能な業務が控えているため、万が一のことを考えると国外調査の時間を取ることができなかった。文献やインターネット上での情報収集に努めたが、限界もあった。一方で、ポピュリズム研究や、1970年代、80年代の政党変容との関連を探るという、新しい方向性の研究を進めることができたのは収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長し、2023年度はまず比較政治学会、IPSA(International Political Science Association)で、これまでの研究成果を報告し、フィードバックを得たいと考えている。具体的には、新しいタイプの選挙プロフェッショナル政党の伸長が、政党システムにどのような影響を及ぼしているのか、ということを、2010年時点と2020年時点の伸長の前後に行われた選挙での各政党の争点セイリエンスを比較することで考察する研究である。このアプローチは、東中欧以外の地位にについても応用可能であり、様々なフィードバックが得られると考えられる。ポピュリズムや法の支配などの分野とも関係させつつ、成果をまとめていきたいと考えている。 また、理論面については、選挙プロフェッショナル政党の政治争点の関係について、他の研究者たちと歴史的な視点を含めた共同出版計画を進行させている。今年度は、その一環として、1970年代から2000年代の人権争点のヨーロッパにおける変遷に関してワークショップを計画している。そのワークショップを足掛かりに、原稿をまとめ、2023年度中には出版を実現する予定である。 それと並行して、ポーランドとスロヴァキアを中心に政党資料収集を実施する計画である。現地出張によって、政党当局者、政党研究者、政党のマーケティング戦略研究者へのインタビューを試みることを計画している。もし可能であれば、本研究課題の研究期間をもう一年延長することも考慮に入れている。先行研究のアップデイトのための新刊書の購入も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査を計画していたが、2022年度は学科主任となったため、時間が全く取れなかった。わずかに日数をとれても、新型コロナのため出入国に制限があり、校務が詰め込まれていたため、帰国を一日も遅れさせることが不可能であるため、出国が不可能だった。海外調査を行えなかったほかにも、著しく研究時間が阻害されたため、一年間研究期間の延長をお願いした。2022年度に予定していた調査や海外学会での報告を2023年度に進める予定である。
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