研究課題/領域番号 |
19K01463
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
石川 涼子 立命館大学, 国際教育推進機構, 准教授 (20409717)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 文化的権利 / 多文化主義 |
研究実績の概要 |
2021年度は、文化的多数派の権利について、主として言語正義論からの研究を進めた。言語正義(linguistic justice)をめぐる近年の議論の端緒となったのは、P.Van Parijs, Linguistic Justice for Europe and for the World (2011)である。ヴァン・パリースは本書で、英語が世界共通語として支配的になることにより言語間の不正義が生じていることを示すとともに、その是正のための措置として、ローカルな言語の保護政策を正当化した。申請者はこの議論を日本に適用し、グローバリゼーションによって英語の支配性が強まる中で、日本の多数派文化である日本語文化に文化的権利が認められるための条件を言語正義の観点から精緻化することを試みた。2021年度は、この考察に関して国際学会で二件の研究報告を行った。
また、多文化主義や文化的権利についての論考で知られるカナダの政治哲学者チャールズ・テイラー(Charles Taylor)の思想の中で、文化的多数派の文化的権利をどのように位置付けることができるかについて考察した。テイラーが関与してきたケベック州のフランス語系住民は、カナダの中では文化的少数派であるが、同時にケベック州では文化的多数派である。このような立場にあるフランス語系住民の文化防衛が正当化されうる条件を明らかにすることに取り組んだ。この考察については、論文「文化的多数派による文化防衛の正当性」にまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、コロナ禍により延期されていた国際学会での報告は実施することができたが、国際的な学術誌への投稿が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響で遅延した研究計画を進めるため、研究期間の延長を申請し、承認された。2022年度にも国際学会での報告予定がある。この報告を踏まえて、英語論文の国際的な学術誌への投稿をしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、予定していた国際学会への出張が実施できなかったことを含めて、当初の予定通りに研究を進めることが困難であったために次年度使用額が生じた。研究期間の延長が承認されたため、2022年度に予定している国際学会への出張や、関連の資料や物品の購入に使用することを計画している。
|