研究課題/領域番号 |
19K01464
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
加茂 利男 立命館大学, 衣笠総合研究機構, プロジェクト研究員 (80047357)
|
研究分担者 |
加藤 雅俊 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (10543514)
新川 敏光 法政大学, 法学部, 教授 (30216212)
徳久 恭子 立命館大学, 法学部, 教授 (60440997)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 福祉国家 / 民主主義 / 資本主義 / 日本型政治システム / 参加 / 自治 |
研究実績の概要 |
本研究は,経済のグローバル化と脱工業化により第二次世界大戦後の先進諸国の政治経済社会秩序とされた「国民国家―代議制民主主義―福祉国家」システムが動揺する中で,新たな政治統合や社会統合がどのように進められようとしているかを明らかにしようとするものである。研究代表者と分担者は,この目的に則して3か国比較を企図したがCOVID-19の関係で調査が難しい状況に置かれた。そこで,2020年度から研究の補助線として新たに導入したオーラルヒストリー研究を通じた日本型政治システムの再検討という研究を2022年度も引き続き実施した。 のみならず,2022年度は,ポスト福祉国家時代における「社会統合」のあり方を検討した。福祉国家は潤沢な財政を通じて国民の政治統合と社会統合を同時に実現した。ところが,脱工業化とグローバル化はそれを難しくし,社会的排除の問題を顕在化させた。これにより社会的包摂が政策課題となったが,そのあり方は国ごとに異なる。本研究は研究代表者の研究蓄積の厚い日本を対象に検討を進めた。 中央政府はコミュニティ政策を充実させることで社会的包摂を図ることを期待するが,具体的な施策を市民社会組織や自治体に委ねることで地域差を生じさせている。換言すれば,社会統合には促進要因と阻害要因があることを示唆する。本研究はそれを明らかにするために,新潟県上越市の地域自治区を対象にアンケート調査を行った。その結果,住民の「決定」を重視する制度が目的と手段の転移を起こし,参加を阻害する可能性があることを明らかにした。社会統合を促進する要因の解明が次なる課題となるが,2023年度はそれに取組みたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の健康上の理由から研究の進捗に遅れが生じている。 くわえて,複数年にわたり本研究の聞き取り調査に協力して下った対象者が急逝されたため,聞取り調査の中断を余儀なくされた。 複数の理由から研究計画の見直しを迫られたため,研究年度を再度延長したことから「遅れている」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間がコロナ禍と重複したため,事例研究を通じた比較分析は難しい状況にある。そこで,事例研究は研究代表者と分担者の研究蓄積の厚い日本に限り,比較研究を理論研究に代替させ,次なる研究のための含意を示したい。 具体的には,日本型政治システム(日本型福祉国家/55年体制)とは何かを明示したうえで,システム転換の方向を複層的に描くことで,理論的貢献を果たしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の健康上の理由から調査出張の計画を延期したため次年度使用額が生じた。2023年度は,研究成果の一部をカナダ政治学会で報告する。このための出張旅費を計上する。あわせて,国内の追加調査及び文献購入等で予算を執行する予定である。
|