研究課題/領域番号 |
19K01464
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
加茂 利男 立命館大学, 衣笠総合研究機構, プロジェクト研究員 (80047357)
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研究分担者 |
加藤 雅俊 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (10543514)
新川 敏光 法政大学, 法学部, 教授 (30216212)
徳久 恭子 立命館大学, 法学部, 教授 (60440997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 福祉国家 / 日本型システム / 政治改革 / 政治統合 / 社会統合 |
研究実績の概要 |
本研究は,経済のグローバル化と脱工業化により第二次世界大戦後の先進諸国の政治経済社会秩序とされた「国民国家―代議制民主主義―福祉国家」システムが動揺する中で,新たな政治統合や社会統合がどのように進められようとしているかを明らかにしようとするものである。研究初年度(2020年度)からCOVID-19による行動制約等があったことから本課題は研究計画を大幅に見直し,オーラルヒストリー研究を通じた日本型政治システムの再検討という研究課題を付加し,ポスト福祉国家再編期に活躍した官僚や研究者たちがその当時,どのような課題認識をもち,どのような再編を試みたか,もしくは,提唱したかを明らかにした。 その過程で,改革像が世代ごとに異なる可能性が明らかになった。1990年代から2000年代にかけて推進された広義の政治改革(選挙制度改革,行政改革,地方分権改革,司法制度改革等)はケインズ主義的福祉国家の限界を指摘し,刷新を求めたが,何を実現するかはあいまいなままに置かれた。 本研究では,オーラルヒストリー研究や審議会議事録等の言説分析から,政治改革の自己目的化,すなわち,ビジョンなき改革が抱える問題が政治の場でも学問の場でも問われなかったことが「失われた30年」をもたらしたとの暫定的な結論を得た。またそのことは,政治統合や社会統合に負の影響を与える。むろん,ビジョンの欠如は現状維持を招きやすいことから極端な声にもとづく統合を回避するという効果をもたらしているかもしれない。だがそのことは,大衆社会論で懸念された「砂粒化する個人」を歯止めることができず,社会的安定を損なわせるかもしれない。これらの問題を政治理論の立場から解明することと,社会的関与の新しいあり方を公共政策の問題として解明することを今後の課題としたい。
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