研究課題/領域番号 |
19K01470
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
張 雲 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (70447613)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 民主化 / 認知転換 / 権威体制 / 軍政中枢 / 内政外交連動 / 政策転換 |
研究実績の概要 |
初年度の2019年度には、「認知」(perception)と民主化の理論について豊富な既存研究を全面的に検証し、ミャンマー民主化における政権中枢の認知転換の分析枠組みを構築した。その上、実証研究においては以下の事例を中心に、書籍、学術論文、政府・国際機関文書、新聞記事などの文献研究を行った。①ミャンマーのASEAN加盟;②「民主化への7段階のロードマップ」③軍政が首都をヤンゴンからネー・ピー・ドーへ遷都;④2007年のサフラン革命(僧侶デモ)と2008年のサイクロン・ナルギス (Cyclone Nargis)災害外交など⑤2007年―2008年、ミャンマーは新憲法の草案採択と国民投票・実施。 上記の文献研究を統合した上で、代表者は1990年―2010年の20年間、ミャンマーの軍事政権中枢にいった中心人物の民主化への認知変遷を重点的に追跡した。彼らたちの関連公文書、演説、報道など関連資料の収集と整理し、どの時点で、どのような理由で民主化への認知の変化があったのかについて探求した。その上、代表者はミャンマー軍政の中枢の主な指導者の二名であるThein Sein元大統領、とShew Mann元軍参謀総長への長時間での直接インタビューができ、民主化におけるミャンマー軍政トップレベルの認知変遷と外交政策のリンケージを探ることができた。聞き取り調査では、について事例を交え、取材を行い、政策決定の最高レベルの論理と認知変遷について極めて重要な知見を得た。さらに、代表者は、ミャンマーの元外務大臣Wunna Maung Linn氏、外務次官Nyunt Maung Shein氏、大統領秘書Ko Ko Hlaingなどへの聞き取り調査もできた。一部の中間成果としてヤンゴン大学、ミャンマー戦略国際問題研究所などで発表した。また、世界労働機関とミャンマー軍政の事例研究を論文にし、国際学術専門誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ミャンマー軍政の中枢にいった主な指導者の認知変遷の文献研究に加え、直接取材もできた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、初年度で実施した軍政中枢の重要人物に関する文献研究と聞き取り調査の内容を精査・整理し、段階的な研究成果を論文化し、日本、米国、シンガポールなどの研究機関、国際会議、学会で発表し、フィードバックをもらう。代表者は、Thein Sein元大統領、とShew Mann元軍参謀総長の取材を継続し、1992年から2011年まで20年近く、ミャンマー軍政のトップであったThan Shwe氏、またアウンサンスーチー氏への直接聞き取り調査も努力したい。ミャンマー国内においては主に反対派国民民主連盟の中心人物、宗教指導者、シビリアン高級官僚を直接聞き取り調査、国外には、主にアメリカ、国際連合、ASEANの元高官をインタビューする。さらに、今後として国際機関、重要な外国NGOなどの民主化における役割の研究に挑戦する予定である。中には、ドイツの政党財団による「社会的外交」(Societal Diplomacy)のミャンマーでの事例の研究をベルリン自由大学、フリードリヒ・エーベルト財団 (FES)連携し、模索している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大のため、2020年2月-3月の外国出張ができなかったためである。ZOOMなどを活用しできるだけ実施することを試みるが、信頼構築などの必要があり、非対面での取材の効果の確信がない。できれば、パンデミック収束後に、適宜に実施する予定である。
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